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第58話

「……ふう。マジでしぶとかったな。空、怪我はないか?」 「け、怪我したのは雪人のほうじゃないかっ」 「でももうなんともないって言っただろ」 「だめだよ。あ、あんなに頭から血を流してたんだから、ちゃ、ちゃんと病院で手当てと検査してもらわなきゃ……。こ、このUFOにはテレポート機能がついてるから、それで」  ガクガクと震える空の手を、雪人がやさしく包み込んでくれる。 「俺なら本当に大丈夫、空」 「で、でも、やっぱり手当てと検査は受けて」 「まあ、空がそういうなら受けるけど。……それより」  いったん言葉を切ってから、雪人は続ける。 「こいつ、どうする? 空」  床に転がったままの男を靴の先で突く。  空は瞳に激しい恐怖と憎しみを宿らせながら言い捨てた。 「もう二度と顔も見たくないし、その存在すら許せない」 「じゃ、このまま頭を踏み潰してやろうか?」  物騒な言葉は真剣な響きを帯びている。 「そんなことしたら、雪人が犯罪者になっちゃう。このまま故郷の星へ帰して、警察に捕まえてもらうしかない。俺の家族のことも含めて色々な余罪が出てくると思うし」 「でも警察はあんまりあてにできねーんだろ?」 「今まではね。でも、雪人がこいつをこんなふうに完全にのしてくれたから、警察も少しはこいつへの見方が変わると思う……変わってくれると信じたい」 「分かった。おまえが気のすむようにしろ、とその前に」  雪人は無様に転がっている男に近寄り、真紅の髪を鷲掴みにすると、これ以上はないくらい冷たい声で宣告した。 「てめぇ、二度と空に近づいてみろ。今度はこれくらいで済まないからな……思い切り苦しめたあと息の根止めてやる……」  雪人は決して声を荒らげた訳ではないし、大人びた端整な顔を歪めることさえなかったが、それでもその怒りのオーラだけは凄まじくて。  UFO内の空気が一気に氷点下にまで下がったような気がして、男だけではなく、空までも震えあがってしまった程だった。

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