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【6】-1
梅雨の雨が長引く中、ルイは献身的に家事をこなしてくれた。
雫の服ではサイズが合わないので、モール内のファストショップで何枚かサイズの大きな服を買って帰ると、王から宝を授けられた家臣のように、感謝で顔を輝かせながら恭しく受け取っていた。
「雫は、優しい」
「普通だと思うよ?」
「優しい。僕を、信じてくれた」
本当に大切なものは、目には見えない。
目に見えることだけで判断すると、真実が違うものに見えてしまうことがある。
子どもための物語には、そんな大切な知恵が贈り物のように包まれているのに、大人になるにつれて忘れてしまうことが多い。
あまりにも多い。
毎日、いそいそと帰り、時おりサイズの大きな男ものの服を探して買っている雫を、店長は目ざとく見ていた。
「四葩 くん、家に誰か男がいるのか」
「そういう質問は、セクハラです」
「セクハラ上等。いいから事情を話しなさい」
セクハラ上等とはなんだと思うが、一度、誰かにルイのことを話したい気持ちが雫にもあった。
読み聞かせのメンバーたちでもよかったが、あまり噂になるのは好ましくない。店長は意外にも口が堅いし、へんなセクハラを別にすれば、かなり信用できる人間だ。
聞いてほしいかもしれない。
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