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【5】-3
「もし、まだ国に帰れないのなら……、しばらくここにいますか」
「ここに、というのは……、この家に、ですか?」
「ほかにちゃんと家があるなら、帰ってもらって構わな……」
「いさせてください!」
また泣きそうな顔をして、ルイが雫を見つめた。
「ここに、いさせてください。できることは、なんでもします」
「あ……。あの、狭いところ、ですが……」
「ありがとう。ありがとう……」
ぽろぽろと涙を流す美貌の王子を、不思議な、少し切ない気分で見つめた。全部、嘘だとしても、今のこの人には居場所が必要なのだと思った。
どこにも行けずに途方に暮れる。
そんな姿はもう見たくない。たとえそれが出会ったばかりの見知らぬ人でも。
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