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 かいつまんで、これまでのことを話すと「キュウリを二本握らせるとは、いやらしいやつだな」と唸った。 「そこ?」  相談したことを後悔したが、店長はすでに前のめりになっていた。 「とにかく、そんな信用できない男と同棲するのは危険だ。騙されるか、襲われるか、妊娠させられるか」 「妊娠はしないと思います」 「最悪、出て行かない場合はどうする」  出て行かない場合。  なぜか、あまり考えていなかった。 「一生、四葩くんのヒモとして暮らすつもりかもしれないんだぞ」  店長の言うことには、現実味があった。お伽噺(とぎばなし)の王子を(かた)ってパラサイトする美形。なんだか新しい設定の、ヒモだ。 「ちょっと、僕が行って話をつけてやろう」 「それはいいです」 「遠慮はいらん」 「遠慮じゃありません」  雫の言葉を無視して、敏腕御曹司はその日のうちに1Kのマンションに乗り込んできた。 「君がハイドランジアの王子か」 「ルイといいます。あなたは?」 「名前などいい。今すぐ四葩くんの家から出て行きたまえ」 「店長!」

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