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【8】-1

 夕方になって日が陰り、また雨が降り始めた。 「雫……」  カエルのルイが言葉を話した。かと思うと、見る間に人の姿に変わっていった。  ルイは服を着ていなかった。カエルになっていたのだから、仕方ない。 「心配したよ、ルイ」 「ごめんね。ありがとう」 「ルイ、僕のことが好き?」  ルイはこくりと頷いた。  好きな人と結ばれると、呪いは解ける。お伽噺の一大セオリー。 「僕を、抱いて」  ルネッサンス時代の絵画のような美しい裸体に触れ、囁いた。ルイが目を見開く。そして、まばゆいばかりの微笑を湛えて、ゆっくりと雫の頬に触れ、眼鏡を外した。  ルイの青い目が、素顔の雫を見つめた。 「雫……」 「ルイが、好きだよ」  囁くと、泣きそうな顔でルイは笑った。その綺麗なルイの顔が近づいてきて、唇が、雫の唇に触れた。  はじめてのキス。  はじめてのキスが、こんなに美しいお伽噺の王子様とだなんて、自分は前世でどんな徳を積んだのだろう。

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