17 / 23
【8】-1
夕方になって日が陰り、また雨が降り始めた。
「雫……」
カエルのルイが言葉を話した。かと思うと、見る間に人の姿に変わっていった。
ルイは服を着ていなかった。カエルになっていたのだから、仕方ない。
「心配したよ、ルイ」
「ごめんね。ありがとう」
「ルイ、僕のことが好き?」
ルイはこくりと頷いた。
好きな人と結ばれると、呪いは解ける。お伽噺の一大セオリー。
「僕を、抱いて」
ルネッサンス時代の絵画のような美しい裸体に触れ、囁いた。ルイが目を見開く。そして、まばゆいばかりの微笑を湛えて、ゆっくりと雫の頬に触れ、眼鏡を外した。
ルイの青い目が、素顔の雫を見つめた。
「雫……」
「ルイが、好きだよ」
囁くと、泣きそうな顔でルイは笑った。その綺麗なルイの顔が近づいてきて、唇が、雫の唇に触れた。
はじめてのキス。
はじめてのキスが、こんなに美しいお伽噺の王子様とだなんて、自分は前世でどんな徳を積んだのだろう。
ともだちにシェアしよう!