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(なんなんだ……)  手にキュウリを握り締め、ため息を吐いた。また男に気に入られたのだろうかと複雑な気分になった。  長百七十センチで、やせ型。黒髪黒目の、どこにでもいる感じの二十六歳の書店員、それが雫だ。特徴と言えば、地味な黒縁眼鏡をかけていることくらい……。そのくらい平凡。  彼女はいない。ずっといなかった。顔かたちを可愛いと褒められることはあっても、恋愛対象としてはさっくりスルーされてきた。  なのに、昔から男にはめちゃくちゃモテた。  眼鏡を取った時の顔が可愛いだの、ギャップ萌えするだのと、言ってくることは女子と同じなのに、なぜかこちらは恋愛対策としてがっつりロックオンされた。 (店長といい、今の変質者といい……)  もう一度ため息を吐いて、キュウリをじっと見た。 「あと、なんなの、これ……」

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