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【2】-2
(なんなんだ……)
手にキュウリを握り締め、ため息を吐いた。また男に気に入られたのだろうかと複雑な気分になった。
長百七十センチで、やせ型。黒髪黒目の、どこにでもいる感じの二十六歳の書店員、それが雫だ。特徴と言えば、地味な黒縁眼鏡をかけていることくらい……。そのくらい平凡。
彼女はいない。ずっといなかった。顔かたちを可愛いと褒められることはあっても、恋愛対象としてはさっくりスルーされてきた。
なのに、昔から男にはめちゃくちゃモテた。
眼鏡を取った時の顔が可愛いだの、ギャップ萌えするだのと、言ってくることは女子と同じなのに、なぜかこちらは恋愛対策としてがっつりロックオンされた。
(店長といい、今の変質者といい……)
もう一度ため息を吐いて、キュウリをじっと見た。
「あと、なんなの、これ……」
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