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【9】-2

「ウシガエルの姿で出会ったのは雫が初めてだった。あの姿の僕にも、雫は優しかった。お礼がしたくて人の姿になって訪ねてみると、最初は怪しんで相手にしてくれなかったけど、次の日にはちゃんと話を聞いてくれた。僕の容姿には惑わされないくせに、やっぱり親切で……」  雫のために何かしたいと思った。服を買ってきたり他愛のない話をしたり、雫は終始ルイに優しかったと続ける。 「一緒にいるうちに、この人かもしれないと思うようになった。性別は気にならなくなっていた」  男性と交わるのは初めてだったが、雫とならできると思ったという。 「というか……、雫がカエルのままの僕とでも番おうとしているのがわかった時、それどころじゃなくなった。その時にはもう、雫がほしかった」  あとは、雫の気持ちをきちんと聞くだけだった。 「それも雫はわかっていて、ちゃんと言葉にして伝えてくれた」  心から愛した相手に「好きだ」と言われた瞬間、ルイの魔法は解けた。 「もう、ウシガエルに戻ることはない」 「よかった……」  しみじみと頷き、二人で笑みを交わした。  しかし……。 「ん? ちょっと待って……」 「なに?」 「今、ルイは、僕から『好き』って言われた瞬間、魔法が解けたって言ったよね。もしかして、えっちは必要なかったの?」  ルイは黙って目を逸らした。  沈黙が意味するものは明らかだった。

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