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Ⅲ 透明よりも切ない虹②

俺はッ αを(かた)るしかなかったんだ。 俺がαにならなければ、母さんの結婚が破談する。 αの家系に生まれてしまったβ 俺がβと知れれば、優秀なαを輩出している笹木家との縁談はなかった事になってしまう。 俺のせいで…… 俺はαになった。 パーソナルデータを改竄して、βの俺を全部消去した。 データ上、俺はα 「君の行為は犯罪だ」 君は……… 「国を欺き、我々αを欺いた」 君は罪人だよ。 「私が訴えれば、君は今すぐ逮捕される」 この意味が分かるか? 「優秀なαを輩出してきた笹木家から、犯罪者が輩出される」 「待って!先生!」 「私は医師だ。誠実に人を救わねばならない職務の私に、罪を見過ごせと言うのかい」 冷冽(れいれつ)な眼差しが陰を落とす。 「できないよ」 「でもっ、凌司……さんが」 笹木家から罪人が出たら、凌司さんはどうなるんだ。 准教授で、教授目前の彼の出世は? 出世どころじゃない。 大学を辞めさせられるかも知れない。 そうしたら研究もできなくなる。 凌司さんの大好きな研究を……俺のせいで諦めなくてはならなくなる。 「迷惑かけたくないから」 「βの弟を持ってしまった事自体が迷惑なのかも知れないね」 うん…… 俺は、あの人の足を引っ張ってばかりで。 役に立った試しがない。 「じゃあ君に教えてあげるよ」 君が役に立つ方法を 「彼の前から消えるんだよ」 そして……… 「私の妻になりなさい」 「せん…せい……」 「私は本気だよ」

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