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Ⅲ 透明よりも切ない虹③

「悠君は生クリーム大好きだったね!クリームのいっぱいのケーキを用意しよう。もちろん私達のウェデイングケーキだ」 「待って!先生」 「なにを待てばいいのかな。この国に残れば君は犯罪者だ」 君は、犯罪者を笹木家から輩出するのが望みかい? 「そうじゃない!」 「では、私と一緒に来てくれるね」 「だけど、俺はβで……」 「私の国ではαとβの結婚が認められている」 「子供産めない」 俺じゃ妻になれない。 役立たずだ。 「子供を産むのが妻の役目じゃない。私は子供を望まない。君を望んでいるんだよ、悠君」 俺自身を…… そんなふうに思われた事、今までにあっただろうか。 「君は君でいい。君だから望むんだ。君である事で、君は既に役目をまっとうしている 私がこんなにも君が欲しいと望んでいるのだからね!」 「ワァっ」 「痛かったかい?」 ベッドに押し倒される。 「優しくするよ」 黒髪がくすぐった。 耳元を撫でる声。 「ラブホ初めてかな?」 「ちがっ」 「初めてなんだね」 こんな所……ひとりじゃ入れない。 「そりゃそうだよ。ここは二人で愛を育む場所なんだから」 チュッ こめかみにキスが落ちる。 恋はPrism…… 砕けていくんだ。 痛みと一緒に、憧れが…… キスが落ちる度に胸が痛む。 あの人の面影が胸をよぎって。 胸をえぐって、胸を潰されて…… 痛いよ。 あなたのせいで。 俺がそばにいたら迷惑をかけてしまう。 あなたのそばには、もういられない。 俺、行かないと…… 俺のせいで、あなたの経歴に傷をつけてはならない。 俺がいたら、あなたは大好きな研究を棄てなければならない。 (俺を望んでくれる人がいるんだ) 俺、今度は役に立てるかな? あなたじゃない人のそばで、あなたじゃない人の役に立って。 そしたら、あなたの役に少しでも立った事になるかな? (俺、先生が好き) 大好き 大好き 大好き あなたよりも大好きになるね…… どうか幸せになってください。 俺の大好きだった凌司さん こんな時にようやく気づくなんて………俺は優秀なαじゃないから。

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