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Ⅳ 霹靂①

フロントガラスの雨をワイパーが拭う。 雨が時間の感覚を狂わせる。 まだ夕方なのに。 「着いたよ」 「ありがとう。すぐ戻るから待ってて」 卑怯だよね。 それでも、あなたに会いたい。 玄関のドアを開けても真っ暗なままで、付く事のない明かり あなたは、この家にいない。 (帰ってないんだ) 怒られる心配、要らないな。 髪が濡れてたって怒られない。 体が濡れてたって叱られない。 震えてたって、寒くたって。 もう、俺はあなたに二度と叱られないんだ…… 「なんて言えばいいのかな?」 あなたの部屋の前で独り言 壊れた気持ちの破片が軋む。 Monologue Prism(モノローグ プリズム) ただいま、じゃない。 行ってきます、じゃない。 今までありがとう。 なにかちがう。 どこか変。 感謝を伝えたいんじゃない。 「あなたに……」 震える拳が白く軋む。 雨の音 胸に打ちつける 鼓動に打ちつける。 こんな想い 苦しいだけで、あなたに迷惑かけるだけで。 なんの役にも立たない想いなんか、捨てれば良かった。 もっと早くに。 (でも、だけど) 痛みだって愛しいよ…… あなたを好きな証だから さようなら、凌司さん ガラスが白く輝く。 雷鳴が窓を打つ。 ごめんね、あなたを好きになってごめんね。 それでもあなたが好き 消えた雷鳴が再び落ちる。 この声は聞こえない。 だれにも 俺にも 稲妻が奪っていくんだ。 なのに。 言葉を あなたへの想いを繰り返す度、どうして想いは深まるのだろう。 愛している。 ずっと前から好きだった。 今も、愛している これからも………愛したかった……… 「あなたに会いたい」

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