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カーティス(2)
少年の名前はカーティス・グランド・ラ・トゥール
ヴィリアーズ王家の地方領地を治める伯爵家の次男で王立騎士学院中等部の3年生
夏季休暇で久しぶりに帰宅してみれば見知らぬ美しい子供がいた。
本を数冊 胸に抱え怯えたような目で
自分の方を見るその瞳の美しさに目が離せなくなっていた
その顔に手を触れようと近づくが
後ずさって逃げていく
近くにいたメイドにこの子供が誰なのかなぜここにいるのか聞こうとした
その時 子供の背後から金切り声が聞こえてきた。
「何をしているの!おまえは」
ビクッと身をすくませ振り返ろうとした子供を、
声の主が手にした扇で打ち据えるのがスローモーションのように見えた。
「なに…?」子供が痛みを熱く感じる頬をおさえながら言うと
ビシィイッ!!
再度打ち据えられる
子供の両頬は真っ赤に腫れている
「お前はっ! その目でわたくしを見るなと!!……何度言えば!!」
鬼の形相でハァハァと肩で息をしているラ・トゥール伯爵夫人の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
子供と婦人の間にあわてて割って入った執事が
子供の手を引きどこかへ連れて行った。
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その後 執事を問い詰めたところ
あの子供の名はフェルといい、父がどこぞの女に産ませた異母弟で
その母親が亡くなってしまい引き取ったそうだ。
「面白い…」
ククッと冷酷な笑みを見せるカーティスは、フェルを自分の部屋に連れてくるように執事に命じた。
ゾッとしながらも執事は無言で礼をして部屋から出ていく。
(あの美しさだと母親も相当なものだったのだろう)
40を超えたばかりの父親の盛んさに驚きはしないが、母が気の毒だとは思う。
今まで何人もの愛人は現れたが子供まで作ったのは初めてだった。
トントン
ノックの後、執事に手を引かれおずおずとやってきたフェル。
ゆるやかに一礼して執事が部屋を出ていく。
フェルは執事に異母兄だと教えられた少年をオドオドと見上げた。
(なんだこの瞳は…)
光の加減でクルクルと変わる美しい瞳の色に惹き込まれる
絶句しているとフェルが口を開いた
「…ごようはなんでしょうか
なんでも…お言いつけくださいませ」
執事にそう言うように教えられたのであろうか
おびえながらもなんとか言い終えたその頬と唇の紅さに動機が激しくなる。
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