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入学 (1)
ヴィリアーズ王国 騎士学院 入寮式
大きな講堂に集められた中等部1年生は12歳~13歳の少年たちだ
全寮制の10年制のこの学院は王族・貴族の子弟と一般人の裕福な家庭の子供が入学することができる
どの子も将来は国の中枢に就くべく、この学院で勉学に励む意気込みで意気揚々としていた
その講堂の壇上には中等部の生徒会長でもあり
ヴィリアーズ王家の王子でもあるジュリアスが挨拶をしているところである
15歳のジュリアスはすらりとした長身で、腰まで伸びた漆黒の髪に王族特有のアクアマリン色の理知的な瞳でその美貌は1年生達の羨望の眼差しを向けられていた
挨拶が終わり引き続き副会長が寮則など説明する
ジュリアスはふぅと一息つき副会長の説明を聞きつつ1年生達を見回す
ほとんどの生徒が初等部から上がっているので100人ほどの1年生たちも顔見知りがほとんどだった
初等部のときから素行の悪い数人に目を光らせつつ視線を移していくと、
ひときわ背の低い子が混じっているのに気づいた
顔はよく見えないが肩まで伸びた金色の真っ直ぐな髪がうっとおしいくらい顔を隠している
(初等部時代にはいなかったな・・・)と手にした寮生資料に目を落とす
(フェル・ドゥマン 一般人か )
なぜ初等部から入学しなかったのかと訝んだが、地方の成り上がり商人の息子かなんかだろうと結論づけた
式を終えザワザワと講堂から寮へと移動する生徒たち
それぞれ指定された建物へと散っていく
初等部~高等部まで合わせると1000人ほどもいるこの学院の寮は建物だけでも10棟ほどに分かれている
初等部は四人部屋 中等部は二人部屋 高等部は一人部屋で
それぞれにトイレとバスが完備されている
「えーと・・・中等部三棟の15号室・・・」
案内の紙を手にウロウロとさまよっている少年はフェル・ドゥマン
顔を覆い隠すほどのうっとおしい前髪に牛乳瓶のような厚いガラスのメガネのせいか
なかなか自分の部屋にたどりつけずにいた
150年歴史のある学院の寮はとても古く、薄暗くきしむ階段を登り3階の自室にようやくたどりつく
(ここで3年暮らすのか・・・)
事前に渡されたカギを鍵穴に差し込もうとした時
ガチャッと内側から扉が開かれた
「やっと来たね!同室になったネヴィル・ルースだよろしく!」
薄暗い廊下に差し込む光を背に立つ少年
ツンツンと立ったとうもろこし色の髪に大きな茶色の瞳の元気いっぱいの笑顔につられるように笑顔になる
「フェル・ドゥマンです よろしく」
「こっちのベッドもらっちゃった よかったかな?」
と入って右側のベッドを指さした
部屋を見回すと左右対称にベッドと机とクローゼットが配置されていて、どちら側でも同じだった
「うん いいよ」
机の上に背中に背負っていたカバンを下ろしベッドに座ると
ネヴィルがフェルの隣にボスンと座った
(ち…近い)
ドギマギしているとネヴィルがいきなりフェルの前髪をかきあげた
「!!!!!」
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