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Petit frère(3)
「どっちかのPetit frèreにしないと すぐやられちゃうぞ」
ジュリアスはハッとした表情でようやく視線をアークライトに移した
あきれたように見る親友の目に耳まで真っ赤になる
(わっかりやすー…)
「ど…どっっちかってっっ! そんな…オレは…」
声が上ずり汗までかいているゆでダコのような親友
(おいおい 落ち着けよ そんなお前見たことね~)
「まぁ 俺らがそういうの作ると大騒ぎになるよな~」
大きな二人の先輩の物騒な話を聞きながら
ソファの上で震えていたフェルはいつもより視界がクリアーなことに気づいた
前髪が…メガネは…!?
真っ青になりながら あわてて前髪を降ろし 顔を隠す
手を後ろに組み これ以上触らないと意思表示をしつつ
腰をかがめるアークライトの銀色の長髪がサラリと流れる
「どうして隠しちゃうの?こんなにキレイな顔と瞳なのに」
疑問を素直に口にする親友に
もっともな質問だとうなずくジュリアス
「っ…ダメだからっ… 悪魔…の目だから…!」
前髪の上から両目を抑え震える
「悪魔?天使じゃなく?」
ソファ前にかがみ
フェルを見上げるようにしてジュリアスがきいた
「みっ…見られたら… えぐっ…られるからっ…!」
「えぐるって…一体誰が…」
この天使のような美しく可愛らしい小さな子が
目をえぐられるからとメガネと髪で必死に隠すなんて
一体どんな過去があるんだ…
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「おくさま!おくさまっ お静まりくださいっ!!」
響き渡る執事の声
真っ赤になった火かき棒を手に迫りくる婦人
「悪魔の目をこれで…」
恐怖で叫ぼうとするが声が出ない
「そのようなことを旦那様がお知りになったら大問題に!」
あわてた執事が火かき棒を取り上げる
「旦那様が…」
ハラハラと涙を流し宙を見上げる婦人に
執事があわてていつもの革ベルトを差し出す
(イヤだ…!やめて…いたぃ…いたぃ…いたぃ……
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王子であるジュリアスがPetit frèreを作るということは
男色家であると公言するようなもので出来ないだろう
かといってアークライトも公爵家の長男という立場であるうえ
男色のことは毛嫌いしてる
…だが…
ここは自分が一肌脱ぐしかないなとアークライトは決心した
フェルと同じ目線に膝を付きメガネをかけてやる
自分のシャツの胸ポケットにある公爵家の紋章をはずし
フェルに差し出す
「これを襟につけておくといい お守りになるだろうから」
「お守り…?」
メガネを受け取り前髪を降ろし震えが収まってきたフェル
手のひらに乗せられた金色のキレイなブローチを見つめる
「そう もしも目を見られても 目をえぐられたりしないお守りだよ」
(これって詐欺になるのかな)
ふとそう思わないでもないが
もしもこの子の顔を見た者が不埒なことをしでかさないとも限らない
いや きっとするだろう
かといって王子であるジュリアスがPetit frèreにするのは憚られる
この子に手を出す気はないし今はこうするのが1番だと判断した
横に同じようにひざまずくジュリアスの口がパクパクしているが気にすまい
しばらく考え込んだフェルだったが
授業がとっくに始まっていることを思い出し
「ありがとうございますっ…」
ブローチをギュッと握りしめ
ソファから降り立ちピョコンっとお辞儀をして
パタパタと足音をさせ慌てて天使は部屋から出ていった
相変わらず口が開いたままドアを見つめている親友の肩をポンと叩き
「まぁ そういうことだから」
と銀髪の女神は微笑んだ
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