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王子の回想 (1)

「にいさま 今日こそボクも連れて行ってください」 プーッと頬を膨らませ文句を言う黒髪の幼い弟 『本物の天使に会ったよ…』 そういう兄の言葉を信じてはいなかったが しょっちゅう勉学を抜け出す兄を見て きっとどこか楽しい場所で遊んでいるんだと思った (不公平だ!) プンプン怒って今日こそは何があっても絶対ついていくと決めていた 黒髪の美貌の王子は困ったなと弟王子の肩に手を置き 「アンジュ(天使)は姿を人に見られたら天に帰らなくちゃいけないんだ」 咄嗟に嘘をつくが初等部に入学したばかりの7歳の弟は騙されない 「にいさまの嘘つき!天使なんて嘘でしょ!」 「嘘じゃないさ」 「嘘だ!じゃ連れてって見せてよ!」 駄々をこねる弟に …今日は行くのを諦めようか…と思った時 救世主が現れた 「ほらほら 剣のお稽古の時間ですよ」 暴れる弟王子の首根っこを捕まえひきずるように去っていく乳兄弟に 口パクで礼を告げ急いで王宮を脱出するジェイ 参ったな…アンジュ(天使)の話なんてしなければ良かった…

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