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懺悔 (1)
「悩みがあるなら懺悔室で相談してみたらいい」
ある日アークライトがそういった
懺悔室とは大聖堂 の中にある狭い部屋で
神様との橋渡しの神父が悩みを聞いてたり
罪の告白に許しを与えたりする場所ならしい
大聖堂 の奥にあるいくつもの懺悔室がある回廊を通り抜け
最奥にある真鍮製の豪華な飾りのある
扉の先にある部屋にフェルは連れてこられていた
その部屋は広く 壁には神々の絵画が飾られ
それぞれの絵画の前にはソファが点在していた
その部屋の更に奥の小さな扉に
「行っておいで」と優しく送り出してくれるアークライト
ここは大貴族しか入ることが許されない場所
そんな場所の懺悔室に自分なんかが来てもいいのかという戸惑いと
毎夜うなされる悪夢により疲弊した体と心が限界なフェルはフラフラと入っていった
1m四方ほどの狭い真っ白な部屋
小さな木椅子が一つ置かれていて その前には木製の小窓があった
椅子に座り 小窓の方を見る
人の気配を感じる
「あなたの悩み罪をここに告白しなさい
ここで話したことは 私と神のみが聞いています」
ユッタリとした低い声
小窓には無数の小さな穴が開いていて
向こう側の部屋は暗くなっていて
フードを深くかぶっているように見える司教様の顔は見えない
反対に真っ白な明るい部屋にいるフェルのことはよく見えていた
顔が見えないという安心感でメガネをはずしうっとおしい前髪も後ろに流していた
相変わらずの天使のような容貌は悪夢でやつれて少し痩せたように見えた
とつとつと話し出す…
ーーー背中が痛い…
傷が塞がらないうちにまた革ベルトで打たれる
自分の部屋にいるといつ夫人がやってきて折檻されるかわからず
図書室の隅で眠った
「どこにいるの…悪魔の子め…」
だんだんと近づく声
恐ろしい
でも叫び声を上げているはずが声が出ない
「どこ…」
すぐそこまで来ている
(たすけて…たすけて誰か…)
(いたい… いたぃよ…!やめ…っ!…!)
ブルブル震えながら悪夢の内容を話すフェルを
木製の小窓ごしに見るジュリアス
そう司教ではなくジュリアスがその部屋にいてフェルの告白を聞いていたのだ
その悪夢は夢ではなく
過去の現実の出来事が再現されているのだと告げたフェル
「そっ… その人は…あなたの母なのか?」
驚きの告白に声がかすれ上ずる
「ち…がう… あの人は父上の奥様で…ボクの母は亡くなりました…」
「母は愛人…?らしく 母が亡くなってからは父の家で夫人にいつも…」
美しい髪を掴まれ この髪でたぶらかしたのかと殴られる
可愛らしいピンクの唇をつねりあげ攻め立てる
悪魔のようなその両目で夫を魅了したのかとナイフを手にえぐろうとする
家の中どこにいてもいつ暴力が襲ってくるかわからず
逃げ惑った幼い日々ーーー
あまりの告白に顔面蒼白になる
そんな悪夢で眠りたくても眠れないのだという
「この学園の中は安全です… 心を落ち着かせ神に祈りなさい」
通り一遍の返答しか思いつかない自分がはがゆい
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