42 / 141

懺悔 (3)

水曜の放課後いつもの生徒会室 「ジュリアス様もお茶のおかわりいかがですか…?」 ここに訪問するようになって2ヶ月ほど フェルは普通にジュリアスにも話しかけれるようになっていた 偉い人でいつも無表情で少し怖い人だと思ってたけど… 「ああ もらおうかな」 目が少し笑っているような気がした それに声が… 自分の恥ずかしい告白を何度も聞いてくれて 『許します 祈りなさい』と神の言葉を告げてくださる 司教様に少し似てる…… 自分が会いたくてたまらないジェイとは違う人だとはわかってはいても 気になって仕方がない 声を聞いていたい 見ていたい 何気ない仕草が優雅で美しい 美しさで言えばジュリアスは闇夜の神のようで アークライトはその闇夜を照らす月の女神のようだった ジュリアス様がジェイだったらいいのに… 何度もそう考えるが 王子様がボクと遊ぶために辺境の森まで来たりしないか 毎回その結論にたどり着くのに願わずにはいられなかった 会いたい…ジェイに会いたいよ… ーーーーー「さぁ 埋めてあげよう」 大きな瞳からポロポロと涙をこぼす幼いフェルを後ろから抱きしめるジェイ フェルの膝には動かなくなったリスの死体 いつも一緒に遊んでいた森の動物たちの1匹だった 「うめる…っと息が…できないっ!」 ヒックヒックとしゃくりあげながらも訴える 「埋めてあげないと…天国に行けないよ」 「天国に…?」 「死ぬとかみさまに…会えるの?」 「そうだね」 「自分で命を断った場合は天国に行けないかもしれないけれど  そうじゃなければ天から天使や神様が迎えに来てくれるよ」 「この子も魂はもう天に登っていったはずだから」 そっとフェルの手に手を重ねる 「一緒に埋めてあげよう?    お墓を花でいっぱいにしてあげようね」ーーーー ボンヤリとするジュリアスを見つめるフェル それを見つめるアークライト (はぁ~ この構図 オレっていないほうがいいんじゃ?) と長すぎる足をもてあましながらソファで銀色の髪を指にクルクルまきつける しかし… どうするうつもりなんだろう あの…夢精…の件は ***懺悔室*** 「前回の相談の解決策なのですが…」 司教の低い声が室内に響く 「その…あれは何も悪いことではなく 誰でもああなるのです」 言いにくそうに だがキッパリと司教は続ける 「本来アレは愛の行為の延長線上にあるもので 愛し合う人は必ずアレを出すのです」 「そのことにより あなたも生まれ 世界中の人が愛の営みとして…えっと…」 汗がだらだらと流れる うまく言いたいのに言えないジュリアス(司教役) 「誰でも…?愛の行為…?」 「そうです」 「に…にぃさまのしたことも…?」 何度も相談するうちに司教に対し神様の使いというより なんでも相談屋さんって感じがして親しみを感じているフェルは 聞きにくいこともズバズバ聞いてくる 「うーーーーーーーーーん………」 答えに窮する 「歪んではいるけれど あれも一種の愛なのかも…しれない…こともない」 「うーーーーーん」 司教様を悩ませてしまっている 「とにかく 成長した男子は誰でもあれを定期的に出すのです」 「出さないから眠っている間に勝手に出るだけで…何もおかしなことではないのです」 (よし うまく言ったオレ!) ローブの下で小さくガッツポーズをするジュリアス これでオールオッケー!だ 天才かよオレ 将来司教になろうかな 「出しかたがわかりません…」 (えっ…) 「だ だ だ 出し方!?」 「はい いつも勝手に出ているので…」 すがるように上目遣いでそんな事を言われ鼓動が早まる ど ど ど どうすればいいんだ   教授するのはやぶさがでもないが 果たしてそれは道義的に許されることなのか!? ローブを着込んでいるせいではなく全身に汗が流れる 回らない頭で必死に司教らしい答えを絞り出す 「そ それは あなたが1番信頼する人に教えを請うのが良いでしょう」 (逃げた…千載一遇のチャンスだったかもしれないのに   おいしいこの権利を他の誰かに渡してしまった…) 惜しいようなホッとしたような気持ちのジュリアス アークライトかな…それとも同室のネヴィルか? どんなふうに聞き どんなふうに教えられ  もしかして直接な手ほどきを受けたりするんだろうか?などと考えていると 沸々と嫉妬心が沸いてくるのを感じる なんとかしてジュリアスに相談するように話をうまく持っていけないかと 逡巡していると 「司教様にお教え願いたいです」 と真っ直ぐな信頼しきった瞳が告げてきた

ともだちにシェアしよう!