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降誕のファザード【1】

夕食後 部屋にやってきた王族専用階の執事の人に アーク様のラ・フォートリエ家の家紋が透かし彫りになった封筒を渡された 「今夜 大聖堂(カテドラル)の降誕のファザードで一緒に流星を見よう」 横でその便箋を覗き込んだネヴィルが 「消灯までには戻ってこいよ」と言いながら大聖堂(カテドラル)の入り口まで送ってくれた 毎年この頃になると3日間 東の空に流星群が現れる 大聖堂(カテドラル)の降誕のファザードの 長い螺旋階段を上がりつつフェルはあの日のことを思い出す 『あいつに好きって言わないの……?』 夏季休暇前のアーク様の告白を振るような形になってしまってからも アーク様はPetit frèreをやめることなく変わらず友達でいてくれる 長い長い螺旋階段を登り足が疲れてきてしまったが ようやく頂上に到達し扉を開くとそこは小さな小部屋になっていて誰もいないようだった 「アーク様…?」 声をかけてみるが返事がないので部屋の中に入ってみる 来るのが早すぎたのかしら… 窓辺まで行き外を見ると右手には学院の明かりがボンヤリと見え 左手のはるか遠くには王宮の明かりが見えた ジュリアス様は夏季休暇中、王宮にいたのかな? きれいなお姫様とパーティでダンスを踊ったりしたのかな? 長い間 お姿を見ていないな… 「会いたいな…」 ポツリとつぶやくと背後から抱きしめられて体がすくむ あ…この香りはアーク様だ 「アーク様…?」 サラリと長い髪がボクの頬にかかると同時に パチンと音がして部屋の明かりが消された 真っ暗な室内にドキッとしたが 流星を見るために部屋を暗くしたんだろう 後ろから抱きしめたままアーク様は ボクの顎を掴み上を向かせ キスをした――― なんで?なんで?どうして?! ボクの思いは知ってるはずなのにどうしてまたキスなんて… 身を捩って拒否しようとするがガッチリと捕らえられた体はビクともせず アーク様の口づけは深いものになっていき舌がボクの口の中に侵入してきた (やめて―――) 叫ぼうとする声が舌と一緒に絡め取られ吸い取られていく ボクが好きなのはジュリアス様だってわかってくれたのに どうしてまたこんな事をするのかわからない 必死で抵抗するが体格差でどうにもならない クチュ… 唇を貪られ舌をからませる 『…オレじゃダメかな?』 せつなそうな瞳でそういったあの日のアーク様の顔が浮かび ボクは暴れることをやめた… クチュクチュ… 狭い室内に僕たちの唇から漏れる水音だけが響く ボクを抱きしめていたアーク様の手がゆるみ 顎をおさえつけていた手を首筋に這わす どちらのものとも知れない唾液がボクの顎を伝う もう一方の手がいつの間にかボクのシャツの中に侵入してきていた 腰から胸へと上がってきたその手はボクの胸の尖りをクルクルと撫でた ―――嫌だ!! もう無理だった 嫌だ!嫌だ!嫌だ! ジュリアス様………  「助けて―――!!」 耐えきれず再び暴れようとしたその時 雲が晴れ月明かりが僕らを照らす すぐさま大きな手で目を塞がれ 床に組み伏せられたボクは 一瞬だったけど見てしまったんだ せつなそうな苦しげな表情の黒髪の想い人――ジュリアス様――の顔を

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