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降誕のファザード【6】ジュリアス視点
****ジュリアス視点****
『開けて中身を確認してみろ』
アークライトにそう言われ
サシェのリボンを解き中を見てみると
茶色い毛布の切れ端のようなものが出てきた
後は何も入っていなかった
「…これは…?」
「お前の以外は全部 中身はバラのポプリだった」
悔しそうに顔を歪ませるアークライト
「お前のだけなんだよ フェルが宝物を入れたのは!」
「オレは気づいてた…
オレがフェルをPetit frèreにするって言ったあの日
初めて会ったあの日から、お前がフェルを好きになってたことに
フェルもお前に惹かれていたことに!
でもお前はくだらないプライドが邪魔してPetit frèreになんかしないだろう?
だからオレが代わりに、お前がその気になるまで守るために形だけのPetit frèreにして
あの子とお前がうまくいくように、一緒の時間が過ごせるように画策してた」
親友の言葉がうまく飲み込めない
宝物の毛布…? オレのためにPetit frèreに…?
「なのにお前と来たらいつまでたっても臆病なヘタレのままだ
あの子の気持ちもお前の気持ちもわかってるのにオレは…まるで道化師 だ」
俯き告白のような言葉を紡いでいたアークライトが顔を上げ
殴るように言葉を投げつけた
「オレはフェルが好きだ―――
お前なんかよりよっぽどあの子のことを想っている!」
アークライトの美しい顔が歪み泣き出しそうに見える
「でも―――オレじゃない…
あの子の求めるのはオレじゃないんだ………」
キッと睨みつける瞳が怒りに満ちていた
「どこまでオレは道化を演じたらいいんだ!?
お前の王子のプライドなんか あの子の幸せの前にはクソほどの価値もない!
いい加減に 動きやがれ!!!!」
(フェルが…オレのこと好きだったって…?)
生徒会室でおしゃべりしてた時も?
司教として相談に乗ってたあの時も?
アークとデートしてた時も…?
手の中の毛布を見てハッとした
「これって…もしかして…」
「そうだよシグの毛布だ」
「あの子の大事な大事なシグの毛布を切り取ってお前のサシェにだけ入れたんだ」
「すぐに捨てられるかもしれないのに
何よりも大事なシグの毛布を切って入れたんだ」
毛布の切れ端をギュッと握りしめる
―――部屋に静寂が訪れる―――
考え込むジュリアスにアークライトが宣告した
「今夜もう一度、降誕のファザードにフェルを行かせる」
「最後通告だ、これでお前がヘタレなままだったら
オレはあの子が嫌がろうが攫 ってどこかに連れ去ってやる」
そう言いきったライバルで親友の銀髪の幼馴染の顔は
夏の終わりの夕暮れ空のように柔らかで温かかった
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