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告白【2】
『………好きなんだ!』
蝋燭の灯りが淡く揺らめく室内でジュリアスの懺悔が始まる
「オレは初めて会った瞬間からフェルのことが好きだった―――」
(オレのアンジュ だと…
幼い頃から想い続けてきたアンジュ が
やっとオレのところに舞い降りてきてくれたと確信した)
「なのにオレは…オレのPetit frèreにするのをためらった…」
苦しそうに俯きながらもフェルの手を握る両手は力強い
「オレは王子で生徒や国民の模範であらねばならないという考えに縛られて
フェルを好きだと言う気持ちに蓋をしようとしていた
でも…それでも…近くにいたかった……――――――
近くにいて少しでも会話をして 笑っている顔を見たかった…」
「でもそのうちにアークが触れているのが許せなくなった
自分のせいなのに、なぜフェルの手を握り隣に立っているのが自分ではないのかと呪った」
「…ジュリアス様…」
ボクは夢の中にいるようなフワフワとした
自分の体が自分のものでないような錯覚に囚われながら
ジュリアス様の言葉を聞いていた
「もうアークのPetit frèreだというのに
自分のものにしたくてたまらなくなった」
「オレは臆病者だ…なのに卑怯で…」
「昨日オレは卑怯な手を使って…
フェルを無理矢理にでも自分のものにしようとした…」
「そんなことをしてもフェルの心は手に入らないのに―――」
告白しながらジュリアスは許しを請うかのように
ポケットのサシェを取り出す
「あんなことをして合わせる顔がないと 逃げようとするオレに
アークがこれの意味を教えてくれたんだ」
「これは…これの中身の意味を知ってオレは…」
ギュッとサシェを握りしめるジュリアス様の手が真っ白になっている
「―――シグに…」
「シグにボクの好きな人を報告したくて…」
顔を上げたジュリアス様の目が潤んでいた
「ボクも最初から好きでした」
「食堂棟で初めて会ったあの時から…」
(最初はジェイだと思ったから…
でも一緒に過ごすうちにジェイじゃなくってジュリアス様に惹かれていた
美しいお姿
少しハスキーなお声
かっこいい仕草
たまに見せるはにかんだような笑顔
―――それらの全てを…愛していた)
ジュリアス様の頭を抱くようにしたら
昨日の香水 とは違う
いつものジュリアス様の匂いがした
「オレは卑怯で臆病で…」
「そんなことないです」
「自分のプライドが邪魔して…ヘタレで…」
「そんなことない」
「かっこ悪い…」
「かっこ悪くなんかないです」
「こんなオレを…許してくれるか…?」
懺悔のように許しを請うジュリアスに
女神のような慈愛に満ちた微笑みでフェルは告げた―――
「大好きです… ボクの1番大切な人になってください」
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