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恋の手ほどき【1】

フェルとネヴィルの寮の部屋 ネヴィルのベッドの上に仁王立ちになって腕組をしているのは 学院の美少女ことフロラン・シャンプルー 突然おしかけた彼はネヴィルを部屋から追い出すと 向かいのベッドに座るフェルを見下ろしながら質問した 「なぜ王子の Petit frèreになるのを断る?  値打ちこいてるんだったら程々にしておいたら?」 突然の訪問に不躾な質問でフェルは呆気にとられていた 「お前には感謝してるから、こうして仲裁に来てやってるんだからさっさと答えろよ」 「感謝…?」 「感謝はおかしいな お前がアーク様の Petit frèreであったことは  この世の黒歴史なんだから 早く人々の記憶を塗り替えてしまわないといけない  だからお前はさっさと王子の Petit frèreになってもらわなきゃ困るんだよね」 尊大な態度で命令してくるフロラン 「……」 「お前…会話って知ってる?聞かれたことには返事をしたらどうなのさ」 「えっと…」 「……」 「………」 「 Petit frèreには…なりません…」 「ダァーーーーッ!!!!それはわーかってるってーの!  理由を言えって言ってるの!バカなの!?」 フロランは腕組みしていた手を腰に当て足をダンダンと踏み鳴らしプリプリと怒った 「なに?もしかしてアーク様を渡すのが惜しくなったとか言わないよね?だったら殺すよ?!」 「……ぅっ…」 (どうしてこんなに怒ってるんだろ なんて返事すれば…) 可愛い顔をして恐ろしい言葉を次々と発するフロランに冷や汗が出てくる 必死に考えをまとめて話そうとする 「ボク…は…」 「あぁん?」 「ジュリアス様が…好きだから…」 「うむん」 「でも… Petit frèreは…」 「うん?」 「ジュリアス様の…お立場が…」 「要するに王子が Petit frèreなんか作るのは外聞が悪いと?」 意図を汲み取ってもらえてホッとしウンウンと頷く 「お前ってほんっとバカ!」 またバカって言われた… 「自分の価値をなんだと思ってるの?そんなにお前は価値のない人間なの!?」 「…わ、わかんない…」 俯き返事に困るフェル  フロランは女ばかり6人の後に生まれた待望の男の子で その愛らしい容姿も相まって大事に大事にチヤホヤと育てられた 【自分こそこの世の中心であり世界は自分のために回っている】  と信じている為 フェルの思考が理解できない 「自分の価値をそんな低く考えているようなヤツはボクは嫌いだ  お前のその考えは王子にも失礼だと思わない?  外聞とかそんなの全部取っ払って Petit frèreになってくれって言ってるんだし  それでよくない?」 冷たいのか優しいのかフロランって人がよくわからない ベッドでうなだれるフェルがボソリと呟く 「でも…来年には留学するって…」 「そうなの?」 「…うん」 「……だから?短い間だしもーいいってこと?恋人もやめるの?」 ハッと顔を上げそこだけはハッキリ否定する 「やめない…! 7ヶ月だけでもいいから一緒にいたい…!」 「ふーん…」 「………」 「お前も一応 色々考えてるんだね」 やっとわかってもらえてホッとする 「だったら 行かないでって言えばよくない?!」 「……!」 考えもしなかった言葉に驚く 「そ、そんなこと…言っても…?」 「いいでしょ 恋人なんだったら」 「……」 ベッドから降りたフロランはフェルのおでこにデコピンをした 「いた…ぃ…」 「お前! フェルだっけ?嫌いだったけどこれからは仲良くしてやってもいいぞ」 両手を腰に当て照れたようにそっぽを向くフロラン 「おともだちに…なってくれるの?」 おでこをおさえながら 上目遣いに言う頬を染めたフェルが可愛くて 「ほんっとボクより可愛い人間がいるなんてムカつく!  けど…いいよ なってやる」 そういいつつニヤリとした微笑みをするフロランが頼もしくて もう少しも怖くなくなっていた 「それでねフロラン…お願いがあるの」 「なに?」 「ジュリアス様には…今話したこと知らせないで?」 「どーしてさ 女は我儘言ってこそナンボだよ?」 「女じゃないけど…」 「留学行っちゃってもいいの?」 「………いやだけど…  ジュリアス様の邪魔にはなりたくないから」

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