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運命の人【1】

「フェルどうしたん――― ジュリアスの部屋に戻ってきたフェルは 部屋の中にジュリアスの姿を見つけるやいなや 繋がれていたテオフィルの手を振りほどき駆け寄り抱きついた 顔中が涙でグシャグシャになったフェルを抱きとめ 何があったのかとテオフィルを見るが両手を上げて首を振るばかり 精一杯の力で抱きしめ離れないフェル テオフィルに手で下がれと命令すると静かに部屋を出ていった 腰をかがめ、滝のように溢れ出る涙を流すフェルと視線を合わせると せつなそうな瞳で呟いた 「…ジェイ―――!」 「ジェイ!ジェイ!ジェイ…」 「ジェイ…ボクだよ アンジュ(天使) だよ…?」 ――――――アンジュ(天使) ―――――― 幼き日から想い続けて 手に入らなかったアンジュ(天使) が今目の前にいるフェルだって…? 生徒会室ではじめて顔を見た時からアンジュ(天使) であればいいのにと オレだけのアンジュ(天使) になればいいのにと… そう願ってようやく手に入れたアンジュ(天使)があのアンジュ(天使) だったと―――? 二人っきりになった部屋の中でジュリアスはフェルを抱き上げる 「アンジュ(天使) ?」 「そうだよジェイ…」 「ほんとに?アンジュ(天使) ?」 「ほんとだよ」 腕の中のフェルは首元から革紐に繋がれた白い石を取り出し 「ジェイ…にもらったコレ 大事にずっと持ってたよ?  ジェイのおかげでボク…ママが死んだ時も  ひどい目に合わされた時も シグがいなくなった時も  ずっとずっとガマンできた  いつかジェイに会いたいって…それだけを思って―――」 「…………オレは……」 「ジェイ ありがとう あの時一緒に遊んでくれて…この石をくれて…」 涙に濡れた顔で満面の微笑みで告げるフェル ジュリアスは茫然として言葉も出ない フェルの手の中の石を見つめる この石はそうだ…あの時の夜光石 何の変哲もない白い石のようだが暗い場所で光り輝くこの不思議な石は 東方の遠い国でわずかに産出される希少なもので 一般人では手に入れることも見ることも叶わない 「思い出したよボク 南国のお花いつか見せたいって言ってくれてたの  今日見せてくれたあのお花たちだったんだね」 そういいジュリアスの首に手を回しギュッと抱きつくフェル そのフェルを震える手でジュリアスは 壊れ物の扱うかのようにそっと抱きしめた

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