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学院祭【2】

「こいつフェルってんだ ボクの舎弟だ」 いつもの腕組みで偉そうにフロランが言う (いつから舎弟になったんだろう…)と思いながら 「…いつもお世話になっています」とりあえず挨拶しておいた 「姉さまっ!?」 「しっかりなさって!」 一人が目眩がしたかのように大げさに倒れる 「…あぁ あまりの美しさに目をやられてしまったわ」 「わかりますわ!このように美しい光景を見れるなんて来た甲斐がありますもの!」 大仰に騒ぐ女性たちに教室じゅうの視線が集まる 「もうっ!恥ずかしいから騒がないで!」足を踏み鳴らし頬を膨らませ怒るフロラン 「あぅ…怒った顔が更に天使…」 騒ぎは一向に収まらないので 「フロラン休憩して家族と校内回ってこい」ネヴィルが指示した 学院祭は街の人をはじめ家族も沢山訪れる 春夏秋冬にある休暇に、生徒はそれぞれ実家に帰るが 学院での生活を見れるのはこの学院祭だけなので、今日は沢山の家族が来ているのだ 騒がしいフロランの一行が去った後 フェルは少し寂しげに去っていった方向を見ていた 金を積んでよその養子に出すような どこかにいるであろうフェルの父や兄が来ることはないだろう だけど… 「フェーウゥー!!」 飛び込んできたとうもろこし頭の一団にフェルの顔が(ほころ)んだ 「ジェイミー?」 壇上によじ登ろうとするジェイミーを抱き上げるフェルに シリルとエイダも駆け寄った 「フェルってやっぱり本物の天使だったんだ…」 フゥとため息をつきながらノーマもやってきた 教室にたくさんのとうもろこし頭が集合する 「お前ら!にぃちゃんのことも少しは見てやれよ」 エリオットが笑いを堪えつつ壇上の弟たちに言う 「やだーフェゥがいいー」 「オレも抱っこー!」 クスクスとはちきれんばかりに大きなお腹のネヴィ母が笑う 「…母さん お腹…こんな遠くまで大丈夫ですか?」 壇上からジェイミーを抱きながらフェルが降りてきて気遣う 「だいじょぶだいじょぶ!来週には出てきそうだし、秋休暇にまた会いにおいで」 ジェイミーを受け取り抱き上げながら、ネヴィルそっくりに太陽のように笑う (フェルにはオレの家族がいる、もうフェルの家族でもあるんだから   寂しくないよな?) シリルを重そうに抱くフェルを見るネヴィルの優しい瞳がそう語っていた ネヴィル一家と一緒に催し物をめぐるフェル 天使の羽と輪っかは教室に置いてきた アドリアンとパリスの人形劇はとても面白くジェイミーとシリルは3回も見た ロジェとティノのホラー屋敷ではエイダが怖くて泣き出した クリストフェルとフランツの駄菓子屋では持ちきれないほどのお菓子を買った (楽しい ボクの家族だ  ほんとはネヴィルのだけどボクの大好きな家族だ) ジュリアス様のクラスの催し物がある校庭に来た 手作りのレールに、木でできたトロッコを人力で押し上げ 坂を下らせる人力ジェットコースターがあって 初等部入学前の6歳までの子供しか乗れないので シリルとジェイミーが乗った 汗だくで押す3年生達 一人1回って決まりなのに我儘を言って(すいてたのもあって)2回も乗って 二人はご満悦だ ちょうど見回りに来たアーク様とジュリアス様に出会って 本当はいけないんだけど、夏季休暇の時にネヴィ母に聞いていた話を思い出し ジュリアス様にお願いして写真を1枚だけ撮らせてもらった 仕事で来られなかったネヴィ父以外の家族全員と ジュリアス様とボクを入れた集合写真がどうしても欲しかったんだ (ボクの1番大切な人をいつかネヴィ母に見せる約束) だけど期間限定の恋人で公言できない関係だから…せめて写真に撮って 将来いつか話せたらと――― あと夏季休暇の時に、王家のミーハーなファンだと言ってた ネヴィ母のためにってのもあって 王族の写真撮影禁止の学院祭なのに、無理をお願いして撮らせてもらった ジュリアス様はネヴィ母と二人の写真も撮ってくれて ネヴィ母はとてもうれしそうにしてて (その人がボクの大事な人だよ)って言いたくてたまらなかった

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