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脱出 【2】

「だめええええええええええええええええええええ!!!!!」 (カーティスが切られる!) ガキィーーン!! 「…ぁあっ!!」 恐怖に目を瞑ったボクが目を開くと、そこにはカーティスの頭を抱えるように抱きつくコピーの苦しげな顔が見えた。振り下ろされた剣がコピーの肩に触れ、血が流れていた。 「コピーーーーーーー!!」 ハァハァと息を乱すジュリアスさま。その目線の先には、鎖を両手に絡め剣先を受け止めるネヴィルの姿があった。 「…っぶねぇーっ」真っ青な顔で剣を受け止めたネヴィルだったがその力を受け止め切れはせずに、額に切り傷を負って血が流れていた。 「フェルが待ってって言ってるでしょ、ちょい落ち着きましょうよ」 顔を流れる血を拭いもせず、小刻みに震える体でニカッと笑った。 血まみれのコピー、血まみれのネヴィル。 「確保―――!」 遠くなる人の声…フェルはその喧騒の中で意識を手放した。 ************************ 目が覚めると見慣れた天井があった。 ここは寮のボクの部屋だ――― 横を見るとボクの左手を握るジュリアス様の苦しそうな顔。 「フェル…無事で……無事でよかった…」ボクの手を両手で握りしめ、額に当て懺悔するかのようにベッドサイドに跪いている。 「コピーは…?」ボクが呟くと病院で手当中だと答えてくれた。 「そう…大丈夫かな たいしたことないといいけど…」 「すまなかった」顔を歪めボクに謝るジュリアスさまがボクの首を擦る。 「こんな…傷だらけにされて、シャツしか着ていない横たわるフェルを見て、床に散らばる髪を見てオレは逆上してしまった…。フェルの言葉も耳に入らずに、感情のままに剣を振り下ろしてしまった」 顔色の悪いジュリアス様の頬に手を添え、ボクはフルフルと首を振る。どれだけ心配させたんだろう、もう一度この手に触れられて言葉を交わせる喜びに打ち震えた。 静かな部屋で二人の呼吸が重なる。 帰ってこれた――― 「来てくれてありがとうございました…会いたかった……。もう一度会えたら、あの巻貝の音を聞かせてほしかった。もし助かったら、いつか行こうって約束してた海に一緒に行くんだって、そう思ってがんばれた。頑張れたのはジュリアスさまのおかげです… ありがとうございました」 「…行こう 一緒に、元気になったら海に行こう」ようやくジュリアス様が少し笑ってくれた。 「カーティス(義兄)は…?」 「あいつは移送先が決まるまで、あの屋敷の地下で拘束中だ」ジュリアス様のお顔が厳しくなる。 「ジュリアスさま…お願いがあります」ボクはベッドから身を起こし座った。 「にぃさまを…カーティス(義兄)を助けてください」 「なんだと……?」 「お願いします 一生のお願いです。無理なことを言ってるのはわかってます、でも、でも!お願いします、じゃないとコピーが…コピーが死んじゃう…」ジュリアス様の手を握りしめ懸命にお願いする。 「無理だ…拉致監禁・強姦人身売買 極刑以外ありえない…」 「それでも…!おねがい…おねがいします」 カーティスが死んだらコピーはきっと生きてはいけない。せめて極刑だけは避けれないかと、懸命に頼み込む。ジュリアス様のお顔が苦しそうに歪む。 「フェルの願いならなんでも叶えたい。だけどこればっかりは…王子だからって、いや王子だからこそ、法を曲げられない」 わかってくれというジュリアスさま。 そうだねわかってる…わかってるけどボクはコピーとにぃさまを、やっと愛を確かめあった二人を死で永遠に別れさせるなど出来なかった。 ボクは決心した――― 疲れたから一人にしてほしい、眠るからとジュリアス様に部屋を出ていってもらった。 ****************** ケガの治療を終えたコピーを治療室の外で待ってたのは、額に包帯を巻いたネヴィルだった。 「よぉ!また会ったな」ニカッと笑い無表情なコピーの肩を抱き 「事情聴取は明日だから、オレと一緒に学院に行こう。あそこにゃベッドがいっぱいあるしフェルもいるからな!」 そういい魂の抜けたようなコピーをフェルのいる寮の4階に連れていった。 「コピー!!」  抱きつくフェル。そうしていると二人は背丈も髪型もソックリのそれこそコピーのようだった。 「肩は?だいじょうぶなの?痛くない?」 「痛み止めで今は痛くないだろう。でも結構深く切れてたらしくて、腕が動かせるようになるかはわからないってさ」 答えたのはネヴィルだった。 ネヴィルの額の包帯に触れる。 「ネヴィル… ありがとうジュリアス様を止めてくれて、こんなケガして、ごめんね…」 「オレは血に慣れてるからな!平気平気」 コピーの頭をわしわしと撫で回し 「こいつと街で会ってさ友達になったんだ。まさかあんな所にいるとは思わなくて驚いたさ」 ネヴィルの距離感に驚きと少しの照れを見せるコピー。ボクのときもそうだったけど、ネヴィルってあっという間に人の懐に入り込んじゃうんだよな。 伸びをするようにウーッと両手を上に上げたネヴィル。 「オレも部屋帰るわ 眠みぃ~クタクタだ。そいつ寝かしてやってな、コピーだっけ?また明日話そうぜ」 そういい手をヒラヒラ振り、ネヴィルは部屋から出ていった。

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