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脱出 【5】
****カーティス視点****
自分で作った屋敷の地下室に拘束されるだなんてな…。
手錠をかけられ、鎖でつながれたカーティスが足を投げ出して冷たい床に座る。
コピーのケガはだいじょうぶだろうか、すごい血の量だった。
あの切ってきたヤツ…あれ、第3王子だろ?なんであんなやつがこんなとこ来てんだ。
わかんねぇ…。
まぁいいか どうせオレは死刑だろうし。
コピーは…
『生きたいです、ご主人さまと一緒にボク、ヒック、生きたぃ…!!』
久しぶりにアイツの感情を見たな。よかった、もとのコピーだ。オレの知ってる甘えん坊の、寂しがりの、怖がりの。
アイツのことはフェルがどうにかしてくれるだろう。変なやつだな誘拐犯に向かって逃げろとか。ほんとアイツって変すぎて笑けてくる。
死刑だっていうのにこのスッキリした気分はなんだろう?オレはいつもイライラして、何かに腹を立ててたのに…。
7歳で学院に入学してからも常にイライラしてて校則違反はなんでもやった。そのたびに親の力で揉み消した。下級生を捕まえては犯した。そうすると少しだがイライラが収まった。
親との記憶はほとんどない。入学してからは年に1回、夏季休暇に母親に顔を見せに戻るだけだ。
母親はいつも夫の不実さをオレに訴えていた。よそに子供が出来たらしい、夫は騙されていると。オレはその度にまたイライラした。夫の愛がなくなったなら、離婚して新しい恋でもなんでもすればいいのに。なぜ、いつまでも愛のない夫に縋るのかオレには理解できなかった。
あの時オレはなぜフェルをかばったのか?意識を取り戻して、あの時の自分の行動にイライラした。休学中の学院には戻らず退学してフェルを探した。
そんな時…アイツを拾ったんだ。
コピーを拾ってからオレはイライラしてる暇なんてなかったな。アイツは世話の焼ける生まれたての子犬みたいだった。オレがいなけりゃ何も出来ないアイツといるとオレは―――
なのにいつからかアイツはロボットみたいになっちまった。イライラした。
だったらそう扱ってやるとフェルに見立てて犯してやった。犯すと少しだけ表情が見えた。
『アイシテル』そう言って嬉しそうに目を細めるんだ。オレはますますイライラした。
鞭で背中にオリジナルと同じ傷をつけてくれと言うコピーに苛立ち鞭打った。
苦しげに喘ぐくせに、けして泣かなかった。泣き虫コピーのくせに…
オレは背中の傷を舐めた、延々と舐めているとイライラが収まってきて後悔した…。背中の傷を見て満足そうなコピーを見るとモヤモヤした。
今なら母親の気持ちがわかる。
アイシテルはそう簡単に変わらないってことを。
愛し愛された記憶が、他じゃ変えがきかない程に苦しめるんだ。
『ご主人さま暗いの怖いの…抱っこしてください』
オレはフェルなんかいらない。
もう遅いけどな。
とりとめのないことを次々考えてしまうな。
死ぬのは少しも怖くない、ただコピーが心配なだけだ。
そうだな 死んだらコピーの幸せを空の上から願い続けよう。オレに出来ることは、もうそれだけだから
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