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脱出 【6】
『オレは父様みたいな警察官になって、王都の治安を守る正義の味方になるんだ!』
みんなで将来の夢を語り合った時、明確な夢を語ったクリストフェル。
―――終わった。見逃してくれるはずがない。
ボクは馬上で前に乗せたコピーのフードをかぶった頭に顔を寄せ囁く。
「ボクが合図したら飛び降りて、門を開けてね…」
痛み止めが切れてきたコピーの顔はウッスラと汗をかいていて、果たしてそんな事ができるかわからなかったが、やるしかない。
「あー、あったあった」クリストフェルが門を開けて、外に出て何かを拾った。
「こんなとこまで飛んでたのか、あーよかった。パリスめ、ボール見つけるまで帰ってくるなとかヒデー野郎だぜ」ブツブツと一人ごとをいいながらボールを拾い上げた。
開けたままの門に手をかけ、僕たちを見上げるクリストフェル。
「さっさと門閉めて戻ろうっと」 ポーンと門の中にボールを投げ「あっ、やべぇ。またなくなる」 門の中へと走っていった。
クリストフェルはボクのしようとしてる事を察してこんなことをしてるんだ―――
正義感が強く曲がったことが大嫌いなのに、ボクらがこれからしようとしてることで尊敬する父様に迷惑がかかるだろうに。
ボクはジークフリードの腹を蹴り、門の外に出る。振り返るとボールを持ったクリストフェルが笑ってた。
ボクはとうとう泣いてしまった。
コピーがボクの涙を見て驚く。
「フェルってばすぐ泣くんだから」クリスが言った
「だって…だって…」
「オリジナルが泣いたのはじめてみた」コピーが顔を見ながら言う。「マジで?しょっちゅうだぞ、こいつ泣き虫だからな」
「う、うるさいよっ!」涙を拭いながら口を尖らせるボク。
「クリス…ごめんね、ありがと」
「オレさー 急に7人も親友失いたくないんだわ。だからこうするしかないってわけ、フェルのせいじゃないオレのためだからな!」
「うぅ……」泣きじゃくるボクの頭をコピーが撫でてくれた。
「泣きすぎ ハハッ」
「た、たすかるまでは泣かないって決めてたから!もう助かったから泣いてもいいのっ!」悔しくて言い返したけど、結局ボクは泣き虫ってことだ。
門を閉め内側から閂 を掛けるクリストフェル。
「行け 後のことは気にすんな、フェルのやりたいようにやってこい」
詳しいわけも聞かずにボクのすることを許してくれて信じてくれる。
フロランもネヴィルもクリストフェルも―――みんな…。みんなの気持ちが勇気をくれる。
「ありがとう!また明日ね!」
馬が去っていった方向を見るクリストフェルの後ろからネヴィルが声をかける。
「フェルの心の負担を減らすために、わざわざ言い訳しに来るとは」
「しゃーないべ」
「男前すぎて惚れそうだわ」
「吐きそうだ…やめてくれ」 ニカッと笑うネヴィルに心底嫌そうな顔をする。
親友二人は肩を組みながら、しばらく門の向こうを眺めていた。
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コピーの案内で人目を避けながら森を抜け、肩に響かないようにユックリとジークを歩かせ屋敷の前まで来たのは夜が明ける頃だった。
「伯爵邸の地下じゃなかったんだね」
今更であるが、はじめて外から見たんだから仕方がない。ってか伯爵邸の地下とソックリに作って家具まで揃えるとかカーティス のこだわりの強さよ。
屋敷の門の前には警官が一人。催眠スプレーで眠ってもらった。
屋敷の入り口の前にも警官が一人、同じく眠らせる。
地下への階段をコピーと下りる。地下室前のドアのところで椅子に座って眠っている警官にも更にスプレーをかけ深く眠ってもらった。
この警官の腰のホルダーから部屋の鍵をはずし開けると、ボクを吊ってた鎖に手錠をされ拘束されているカーティスの姿があった。
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