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第24話 しとやかに

「あら、お風呂、入られましたか?」  旅館の人のその一言に飛び上がりそうなほど、ううん、少しだけ本当にお尻が浮いたくらいに慌てた。  俺も先生も浴衣を着てるのを見て、すごい笑顔でそう言われて、ほんの少しだけ悪いことをしてる気分になる。なんというか、お風呂、入った理由が思ってもらってる理由とちょっと違うから。下着とかは大丈夫だったけど、ね。でも、ほら、色々……。  テーブルに向かい合わせで座って、少し遅い、そしてすごく豪華なランチを配膳してもらってる間、ごにょごにょと浴衣姿に赤面していたら、先生が笑ってた。 (笑わないでよっ! 先生)  そう目で怒ってみせても笑ってる。  ――続きはまた後でな。ランチ、そろそろ運ばれてくるだろうから。  手でイかされたのに、物欲しそうにしてたのがバレたのも恥ずかしいし、先生の涼しげな顔とは逆に真っ赤な茹ダコ状態でしがみついてなすがままだった、子どもみたいな自分も恥ずかしいし。しちゃって、お風呂入ってすぐ、何も知らない旅館の人に笑顔でご飯を用意されてるのも恥ずかしい。  全部全部、ぜーんぶ、恥ずかしいけど。  ぐーきゅるるるる  料理が運ばれてきたのを見た瞬間、そう返事をしたお腹の虫が一番、恥ずかしい。  たくさん食べてくださいねって言われちゃった。すごい、子どもっぽい。っていうか、この旅館の人から見たら、俺なんて子どもなんだろう。甥っ子とかさ、そんな感じで。  ランチはコースとかじゃなくて季節のお弁当なんだって。お弁当って言っても、ガチのじゃなくて、九つに区切られた正方形の箱の中に小皿にちょこちょこおかずが乗ってるお弁当。ご飯とお味噌汁付き。デザートは季節の果物とゼリーだった。食後の飲み物は先生がコーヒーで、俺は、ウーロン茶。オレンジジュースは断固として断る。  こういうおしとやかなご飯ってさ、食べるの難しい。ゆっくりじっくりって言われても、一口で食べられちゃうような小皿のとか、あっという間に食べ終わるじゃん。だから、やっぱり食べ終わるのは俺のほうが早かった。  果物は少し酸っぱくて、ウーロン茶は苦かった。 「浴衣、似合うな」 「え?」 「すごく色っぽいよ」 「……えぇっ? お、俺っ?」  頷いて、眩しそうに目を細めた先生のほうが断然似合ってる。カッコいいし、ドキドキするし、色っぽいって言ってもらえたけれど、それ先生のことだ。  目を合わせただけで、なんかさ。なんか。 「あ、ありがと。先生、そ、それにしてもすごい豪華だったね。すき焼きだって。めっちゃお肉柔らかくて、溶けちゃうくらい」 「あぁ」  ご飯下げてもらうの、いつだっけ。食べ終わるの早すぎた? もっと大人は時間かけて食べるもんね。法事とかだとさ、食べ終わってから始まる大人の宴会が長くて長くて退屈だった。  まだ、かな。 「そ、そだ、少し行ったところに吊橋があるって言ってたね。い、行ってみる?」  けっこうスリルがあって面白いんですよ? って、言われたけど、あれ、今思うと、子どもにはこんな観光っぽいものが何もない山の旅館じゃつまらないって思われたのかもしれない。 「ぁ、でも、先生は別に、そんなのおもしろく」 「いや、いい」  大人だもんね。先生は大人だから。俺は子どもだから。料理でもなんでも、おしとやかに待ったりするの苦手なんだ。 「だ、だよね。先生は別に」 「葎」  まだ、なのかな。この食器下げてもらうの。 「葎」  これ、下げてもらわないと、できないから、早く下げてもらいたいなぁって。俺が子どもの頃の給食係りみたいに片付けできたらいいけれど、ダメでしょ? ここ、大人の場所だもん。  ダメなんでしょ?  まだ、おしとやかに待ってないと。 「葎」  いけないんでしょ? 「……」  押し倒されて、真上から先生と真っ直ぐ視線がぶつかった。 「せん、……っ、ン……ン」  急にごろんって寝転がったから浴衣が肌蹴て、脚、が。でも、両手首を両手で畳みに押し付けられてるから直せなくて、そして、直さずもっと乱したくなるくらいの濃いキスに、しっとりと甘い声が零れる。 「ン、ふっ……ン」  しゃぶりついた先生の舌がコーヒーの味で苦い。  苦くて、ドキドキする。  ご飯を食べた後の口で、今度は。 「あっ……先生っ」  今度は俺が食べられるみたい。  さっき、一度、イったのに。 「あっやっ……ン」  あんなにたくさん先生の手を濡らしちゃったのに。 「やぁぁっン、ぁ、乳首、ん、ぁっ」  片方を指で転がすように刺激されて摘まれて、もう片方を舌で濡らしてもらってから、歯を立てられたら、もうまた勃ってた。 「あっ、あっ、あ」 「葎」 「あっ、あああああっ、ン」  乳首を食べられちゃうのかもってくらい口に含まれながら、ローションをまとった指にお尻を開かれて、甘い声が零れた。  待ってた、から。 「せんせっ……ぁ、ン」  先生とセックス、またできるの、してもらうの、待ってたから。 「柔らかい、でしょ?」 「あぁ、したばかりだからな」  今日だけのことじゃないんだ。 「違う、よ」 「?」 「先生に初めて抱いてもらった日、うちに帰ってから」  ずっと、初めての日からずっと待ってたから。ね? お尻の孔が先生のこと欲しそうに口を窄めた。 「したの。オナニー」  二回目のセックスを待ち望んでた。 「ここに先生の大きいのが入ってたんだって、思いながら、鏡でキスマーク見ながら、したの」  セックスをオカズにオナニーしたの。 「でも、先生の指がいい、ン、あっン」  ローションでちゃんと濡れた? 痛くないよ。全然。だから。 「先生のが、いい、の、ぁっ、あぁぁぁっ、っ、っ」  だから、太くて硬い先生のでまた貫いて欲しい。 「あっ……あぁっ……ン、ん」  両手を恋人繋ぎしながら、大胆に開いた脚の間に先生が。 「あンっ」 「やらしいな……」 「あ、せんせっ」  貫かれた後、もっと奥を先のとこで、クンってされて、背中が仰け反った。 「下着、つけてないのな」 「ぁ、ン、だって、汚しちゃ、う」  先生のペニスの形、すごく大きくて、すごく太くて、すごく。 「あつ、……ぃ、先生のっ」  気持ちイイ。それにやっぱり。 「嬉しい、ぁあっンっ……あっ、ダメっ」  もっと深いとこまで来て欲しくて、先生にたくさん気持ち良くなって欲しくて、思いっきり脚を広げた。突き上げられる度に浴衣が肌蹴て、むき出しになった肩にも鎖骨にも、それに胸にもキスをされながら、掴めない畳をカリカリ引っ掻いては、甘い声が上がりそうになる。 「あぁぁっ、あン、ン、あっ、せんせ」 「葎」  畳、さっき、ここに旅館の人がいた。笑ってにこやかに話してて、俺はお腹がぐーって鳴って恥ずかしくて。 「そうだった。これ、言わないと下げに来るな」 「え?」 「ランチ。待ってろ」 「あンっ」  入ったまま、先生が身体を伸ばして、電話を取った。 「ぇ、嘘、先生」 「……」  今、セックスしてるのに? 「……あぁ、もしもし? すみません」  今、先生のペニス、入ってるのに。 「ランチのお膳なんですが……えぇ」 「っ、ん」  なのに、先生がクンって奥を小さく突き上げた。ダメ、なのに。今、声出したらダメでしょ? だって電話の向こうにいるんだよね。さっきの人がいて、話してるんだよね?   なのに、声が。 「ン、ふっ……ン」  声が我慢できない。 「すみません。宜しくお願いします」 「や、ああああぁぁっン」  電話が切れたと同時に奥めがけて先生のが突き刺さる。 「あっ、らめ! 乳首、コリコリしたら、イっちゃうっ」 「っ」  電話、聞かれてない? ねぇ、先生、声が向こうに。 「やらしいな、葎」 「あっン」  だって、俺と先生がセックスしてるってバレちゃうよ。 「葎」 「あっン」  こんなやらしいセックスをしてるって、知られちゃう。 「あ、センセっ」 「…… 「ぁ、あっ、奥、んっ、あっ」  突き上げられて気持ち良くて、引き抜かれそうになると切なくて、奥にまた突き立てられたらたまらなくて。お腹の底のとこが熱くなる。 「あっ、先生、の、大きいっ」  もっとぐちゃぐちゃにされたい。 「葎」 「あ、あっ」  もっとぐちゃぐちゃに、なりたい。 「あ、あ、あっ、あああああああっ!」

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