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第25話 腕の中
先生のイく時の顔って、すごいんだ。見てるだけで、発熱しそうになる。
「っ、葎」
「ンっ」
発熱、っていうと、風邪みたい? でも、発情とか、言うのもなんか恥ずかしいし。
「あっ……ン」
ずるりと抜けていくまだ硬い先生のを身体をくねらせて見てた。ゴム、してた。お腹の上に出さなかったなぁって思ったけど、そっかゴム、いつの間にしたんだろ。そういうの、やっぱ慣れてるよね。
「いいのに、ゴム、しなくて。俺、女の人じゃないし」
先生、大人だし、恋人、いたし。
「気にしないでできるほうが」
「……」
「だから、その」
妊娠とかしないでしょ? 生のほうが気持ちイイんじゃないの? ゴム、してるよりさ。
「俺は、」
「バカ」
のそのそと起き上がった俺に先生がキスをした。セックスみたいな濃いのじゃなくて、ただ触れるだけの衝突みたいなキス。
そして、今、寝転がってしてた直後でボサボサなうえに汗で湿ってそうな俺の髪をくしゃりと掻き乱す。
「そんな雑にお前のことを扱うわけないだろ」
「……」
雑に扱わないで、くれるの? 俺のこと? 生徒と先生だから? それとも。
先生は絶対に「好き」の返事をくれないけれど、でも好きの代わりをくれる。キス、をくれる。
「も、もぉ! 生徒にバカって言った」
そのキスにどれだけ俺が嬉しくなってるかも知らないで。
「なぁ、葎」
「?」
「もう一回風呂、入るか」
どれだけ俺が先生を大好きなのか、分かってるみたいに笑ってるんだ。
「せ、狭くない?」
「まぁな。ただの風呂だからな」
お風呂っていうから、俺はてっきり大浴場に露天風呂のほうかと思った。けど、先生が入ろうと誘ったのは部屋にある小さなお風呂。そこにお湯を溜めて二人でザブンって。
「んもー、これ、入っちゃったらほぼ箱詰め状態だよ。先生のほうを向けない」
「じゃあ、最初こっち向きで入ればよかっただろ」
「だって、それ恥ずかしいんっ、……ン、ぁ」
後ろから抱っこされてるような体勢。先生の足の間にちょこんと座っていて、膝を抱えるように身を縮めてる。これが女の人だったらもっとすっぽり納まるのかな。見たことないけど、理事長の娘っていう人なら。
「ひゃぁ……ぁ、ン」
「ホント、色白だな」
うなじを指でなぞられて、ビクンって仰け反った。
「細いし」
「ん……」
「壊れそうだ」
「……壊れない、よ。男だもん」
やっぱ、背中向けててよかった。
「男、だもん」
細くても色が白くても、きっと今だけだ。男だから。そのうちもっと胸板も厚くなって、背も伸びて、骨っぽくなる。髭だって生えちゃうんだ。ツルツル肌なんて本当に期間限定。どんなに小さく身体を折り畳んでも、この狭い浴槽にはきっと二人で入れないくらいになっちゃうよ。
「……」
セックスしてもらえるのも、今だけ。
「葎?」
「! そ、そろそろ出るっ」
中等の頃に偶然見かけた先生と恋人のツーショット。あの女の人は高いヒールの靴を履いていたからいくらか俺より背が高く思えたけど、たぶん同じくらい。細さも同じくらいかな。
先生を置いてけぼりにして、お風呂から出ると、まだ大丈夫な自分がバスルームの鏡に映ってた。先生が言ってくれた、色白で、細くて、抱き締めたら壊れちゃいそうな、まだ抱いてもらえる自分が。
その鏡に映る自分と目に焼きついてる先生の腕に絡みついていた女の人とを重ねて比べて大丈夫そうなことを確かめてからシャツを着た。白いオーバーサイズのシャツ。選んだのは襟がついてるから、キスマーク見えないでしょ?
首筋に赤い印がくっついてる。
先生がつけてくれたキスの印。キスの……印。
たったひとつだけ。もっとつけて欲しいって言ったらダメなのかな。
「浴衣、くしゃくしゃにしちゃったね。先生の分も畳んでおいてあげるねー」
まだお風呂の中にいる先生にできるだけ明るい声でそう告げた。道着で着物の畳み方ならささっとできるから、二人分を畳んで足元のカゴに置いた。
まだしたい、とか、もっとつけて欲しい、なんて言っちゃダメに決ってるじゃん。たくさんしてもらったじゃん。ご飯の後にたくさん、してもらったでしょ。だから、我儘しないように。
「先生の着替え、ここね」
お風呂から出てきた先生に急いでバスタオルを手渡そうと振り返って、さっきセックスしてくれた先生の裸をまともに見ちゃった。
筋肉が程よくついてて、引き締まった身体に濡れた髪、真っ直ぐ見つめられて、視線を合わせてると、きつくなる。お腹の底のところ、さっきたくさん突いてもらった奥のところがヒリヒリ焼けて熱くて仕方なくなる。
「ま、待ってて、今、俺、着替えちゃうね」
まだシャツ一枚だった。
だから慌てて――。
「どうしたもんかな……」
「え、せん……」
まだ、先生の腕の中にすっぽり収まる自分がいる。裸で、濡れ髪が色っぽい先生が流しのとこに両手を置いて、その両手の間に白いシャツ一枚だけを羽織った俺がいて。
「何? どうしたもんって」
「……」
「せっ……ン」
するりと忍び込んできた手がまだ敏感な乳首を摘んだ。
「あっ……先生っだ、め」
オーバーサイズのリネンの白いシャツはふわりと簡単に先生の手の進入を許してしまう。その白い布で覆われて見えないけれど。
「あっン、……先生っ、ぁ、抓っちゃ、やっ」
布の下で隠れてるけど、乳首をまたコリコリにされて、された分だけ気持ち良くなった身体が鏡の前に晒された。
「やぁぁっン」
もう、堅くなってる。
「あ、先生っ」
「困ったな」
「ンっ、ぁ、先生」
「離してやれない」
「あ、ぁっ……」
困ってくれるんだ。どうしたもんかなってさっき呟いたのは、困ってくれてるから?
「あ、嬉しい」
つい、ぽろりと本音が零れた。我儘しちゃダメだってついさっき思ったけれど、先生が困ってくれたのが嬉しくて、つい、零れて、滴り落ちる。
「あ、ン……ここ、欲し」
おねだりの言葉も、乳首で気持ち良くなって勃ち上がった先端から先走りも、零れて、滴る。
「あ、ぁっあ、あ……あああああ、ン」
根元まで一気に挿入されたら、俺、こんな顔しちゃうんだ。
「ぁ、あっ……ン、せんせ、ぁ……ン」
こんな甘い声上げて、こんなふうに喘ぐんだ。
「んんんっ、らめ、乳首、も、しちゃ、や」
ずちゅぐちゅって、やらしい音がして、濡れ髪の先生が険しい顔をしてた。両手をついて、腰を力強く打ちつけてくれる先生に。
「ぁ、あっ、ン、気持ち、イ」
先生に抱き締められてる。
「せんせ」
ちゃんと腕にすっぽり収まって、突き上げられる度につま先立ちしてる自分が。
「あっ……ン、壊れない、から」
「っ」
「激しく、して、センセ」
身体をくねらせ先生のペニスに甘える自分がそこにいた。
「先生、大好き」
「っ」
先生に抱かれてる自分が――。
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