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 何もしていないが抱くだけで葉菜は静かに寝始めた。 朱華「なんで……」  ほっとしたような、少し泣きそうな表情で朱華が葉菜を見る。 辰典「子供は素直だからな、俺の心の広さとか余裕が分かるんだろうよ」  辰典、どや顔。 朱華「なんですか、それ……」  ちょっと笑ってしまう朱華。 辰典「植森朱華、どうして金を受け取らなかった?」  真面目な顔になった辰典が問いかける。 朱華の心の声「フルネーム……」 朱華「他の皆さんが断った理由を直前に聞いてしまいまして」 辰典「誰から聞いた?」 朱華「どなたかは知りません。廊下であなたみたいな方々が噂されてました。この子のためにも警察に目を付けられたら困るんです」  目を伏せる朱華。 辰典「はぁ……、赤ん坊が居るんじゃ金が必要になるだろう?」  あきれたように息を吐きながら辰典が尋ねる。 朱華「……」  答えない朱華。 辰典「よし、どうにかしてやる」  葉菜を抱いたまま、やる気満々で立ち上がる辰典。  

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