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近くの魚メインの居酒屋に行こうと誘うと嬉しそうに笑う。 そういうのはね、俺に見せてくれなくてもいいんじゃない? 「飲まないの?」 「うん、コーラにする」 「なんでプライベートで飲まないの?」 ゆーちんが接待以外でジュースしか飲まないのは有名である。 「酒は別に好きじゃないし、飲まなくても楽しいから」 だそうだ。 「日本の店はどこでも美味しいよねえ」 「日本でも不味い、旨いはあると思うけど」 「不味いレベルが違うよぉ」 箸で魚の身をほぐすゆーちんは、L・Aで生まれ育ったと思えないぐらい扱いが上手い。 「ゆーちん、箸の使い方上手だねえ」 「普通に日本食で育ったもん。家ではパスタも箸で食ってた」 「まじか」 「凛ちゃん、魚の食いかた下手くそ」 くすくす笑うゆーちんの細められた瞳が、居酒屋のライトにあたって透き通るように茶色い。 「知ってる。骨取るの、キライなんだよな」 普通の会話をしている分にはなにも問題がない。 このままでいいのにな。 「うーそっっ」 ガン、とゆーちんは氷だけになったグラスをテーブルに置いた。 「は?なにが?」 「お酒、大好き!ビールは毎晩飲んでる!」 「ふーん」 「だってね、プライベートで飲んでやらかしちゃったら困るじゃん」 「接待でもやらかすかもじゃん」 「接待は仕事の一環だから酔わないの!プライベートは気が抜けてるから……、特に、凛ちゃんの前でカッコ悪いとこ、見せらんない」 テーブルの上で下を向いて指を組むゆーやんに、俺は固まってしまって、いや、なんと答えろと?何が正解なんですか! こころの中でツッコミつつも、これ以上俺もどうしようもない。 みんながネタだと思っているゆーちんの俺へのアタックは本気であるということを、俺は知っている。

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