11 / 55
第11話 手作りマスコット
手作りのマスコットは、どうしても女の子の存在を感じさせてしまう。
保はこれほどの美少年だ。女の子にだってモテるだろう。
中性的な、浮世離れした美貌だが、テレビなどで人気のアイドルなどを見ていても分かるように、保のような雰囲気の男に惹かれる女の子は多い。
真っ直ぐで素直な性格も、好まれると思う。
今は特定の彼女の存在は感じられないが、その一歩手前くらいの女の子はいるのかもしれない。
橘は部活動以外での保が、どんなふうに過ごしているのか、ほとんど知らないのだから……。
もし、保に彼女ができたら……、先輩先輩って慕ってくれることも少なくなるのだろうか……?
寂しいな、と橘は思った。なに女々しいことを、と考える反面、確かにそう考える自分がいる。
「橘先輩? どうかしましたか?」
気づかぬうちに物思いに沈んでいたようで、保が心配そうに声をかけてきた。
保の心配顔を目にして、思わず口が滑ってしまう。
「あ、いや、そのマスコットが……」
「え?」
きょとんと聞き返されて、ハッと気づいたが、口から出てしまった言葉はもとには戻ってくれない。
「いや、その鞄にぶらさがってるマスコット、手作りだろ? 女の子からのプレゼントかなって思って、保、モテるんだな」
本当になにを言ってるんだよ、オレは。
橘が自分自身に舌打ちしたい気持ちでいると、保は少し怒ったみたいな顔と声で言い返してきた。
「そんなんじゃありません。これ僕が自分で使ったんです!」
「は?」
思ってもいなかった言葉が返ってきて、橘は間抜けな声を出してしまった。
「保が作ったって? このウサギのマスコットを?」
橘がもう一度聞くと、保は一転、笑顔になって言った。
「はい。だって僕、中学の頃はずっと手芸部だったんですから」
ともだちにシェアしよう!