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第16話 告白の翌日

 翌日の放課後、保は緊張で張り裂けそうな胸を抱いて、部活へ向かった。  部室の前で何度か深呼吸してから、ドアを開ける。  保の思い人は、他の部員たちと雑談に興じていた。 「こ、こんにちわー……」  少し上ずってしまった声で、でもなるべくいつも通りに挨拶をすると、部員たちが次々挨拶を返してくれる。 「よー、保」 勿論、橘も同じように挨拶を返してくれた。  まずは第一関門突破で、保が少しだけ緊張を解いていると、橘がやって来た。  心拍が一気に跳ね上がる。 「保、これ、昨日言ってた小説。お勧めのやつ選んできたから」  橘はそう言うと、紙袋を手渡した。 「あ、ありがとうございますっ……」  彼が昨日の約束を覚えていてくれたのが、うれしい。  二人のやり取りを見て、他の部員たちが、「なんだなんだ?」と興味津々で聞いてくるのに、 「ホラーミステリー小説だよ。オレと保の好きな作家が同じ人でさ」  ほがらかに答えている。  橘に特に変わった様子は見られなかった。同性の後輩から告白されたという戸惑いも狼狽も感じられない。  昨日は確かに、橘先輩、戸惑っていたのに……。  ふと保は思う。  もしかして、昨日の僕の告白は、なかったことにされてしまうのかな……?  それは、辛いな、と思った。  このままフェイドアウトなんて嫌だ。  そんな中途半端な結末に終わったら、蛇の生殺し状態に近いものがある。  ……でも、と考え直す。橘先輩がそうしたいなら、自分もそうするしかないんじゃないか、と。  あれやこれや悩んでいるうちに、悩むのにも疲れてきた。  よく考えてみれば、昨日の今日じゃないか。あまりに焦り過ぎだよね。僕は、返事はいつでもいいって伝えたじゃないか。なのに、もう答を欲しがって……。せっかちすぎるよね。  保は心の中で自分の頭を思いきり叩き、反省した。

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