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第22話 通じ合う思い

 公園は本当に小さなもので、遊具といえばブランコくらいしかなかった。  日中は幼児を連れた母親たちの絶好のおしゃべり場なのだろうが、今は夕食時のせいか、誰もいない。  奥にあるベンチに二人並んで腰かけた。 「保、もしかしてオレのために受験勉強がんばってくれたの?」  先ほどの、彼の従兄である教師の言葉をふと思い出し、問いかける。 「そうです。だって先輩と出会って、僕の存在を知ってもらわないことには、なにも始まらないから……」 「がんばり屋さんなんだな、保は」 「そんな――」 「好きだよ」 「え……?」 「オレも保が好きだ。おまえに恋してる……」  突然の告白に、保の大きな目がさらに大きく見開かれた。 「……もっと早く気持ちを伝えたかったけど、オレは、こわかったんだ」  本当は今でもこわい。自分の思いが大きすぎて。 「なにがですか……?」 「オレは保と付き合いたい。でも、そしたらオレは、おまえに色々なことしたくなるよ? 保はそのこと、分かってる?」 「分かってます。僕だって……同じです」  少し怒ったような口調で即答したことが、逆に保の幼さを露呈しているように思えた。  橘の表情になにを見て取ったのか、保が再び言った。 「本当に分かってます」 「オレはおまえを傷つけちゃうかもしれないよ? ……雄の乱暴さで」 「いいです。橘先輩になら傷つけられたって」  胸に保への愛しさが込み上げて、橘は彼を強く抱きしめた。  そうして、保の耳へ囁きを贈る。 「傷つけたくなんてない……、大切にするよ、保。でももし……、気持ちが暴走しちゃったら、ごめんな……」

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