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第23話 初めてのキス

「橘先輩……、好きです……」  涙声で囁きながら、保がおずおずと橘の背中へ両腕をまわしてきた。  橘は保の柔らかな髪を優しく撫でてから、涙が滲んでいる目元へそっとキスを落とした。  それから、彼の唇へ、ふわりと羽のような触れるだけのキスを贈る。  保の唇は想像していたよりずっとずっと柔らかく、みずみずしくて、その気持ちの良さに、橘は夢中になってしまう。  角度を変えて、ついばむキスを何度も繰り返した。  保は橘の背中へ両腕をすがらせ、うっとりと目を閉じて、されるがままに口づけを受けている。  長いキスのあと、名残りを惜しむようにゆっくりと顔を離し、保を見つめると、彼は頬を淡いピンクに上気させ、大きな瞳はいつもにも増して潤んでいて……。  橘は恋慕の思いの赴くままに、彼を抱きしめる腕に力を込めた。 「好きだよ……、保」 「僕も、先輩が大好きです……」  夜の闇が少しずつ忍び込んでくる公園で、ようやく思いを通じ合わせた二人は、長いあいだ抱擁を続けた……。

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