25 / 55
第25話 目立つ二人のリスク
「やっぱり図星か。あのな、橘、おまえのその嫌味なほど端整なポーカーフェイスも、オレたちには通用しないんだからな」
内川がそう言い、和田が言葉を引き継ぐ。
「だいたいスポーツバッグに保くんとお揃いのウサギさんなんかつけてさー。女子じゃねーんだし、もうアヤシイ匂いがプンプンってやつだよ」
そんなことまで指摘されて、さすがの橘もぽかんとなってしまう。
「あんな小さなマスコットに、よく気付いたな、おまえら」
半ばあきれた気分で言うと、
三人の悪友たちはやれやれと顔を見合わせた。
「橘って、自分がモテるっていう自覚はあるくせに、どれだけ目立ってるかはイマイチ自覚ないんだよなー」
「いやいや。橘はまだマシだよ。問題なのは保くんのほう。あの子、あんなに綺麗で目立つのに、まったくその自覚ないみたいだもん」
「橘、はっきり言って、おまえと保くん、めーっちゃ目立ってるぞ」
三人に次から次へと言われても、どうもピンと来ない。
「でも、オレと保は、学校では部活くらいでしか一緒にいないし、それも学年が違うから、それほど目立つわけ――」
「あまーい!」
橘の言葉は途中で遮られてしまった。
「おまえら二人、今、全女子生徒の注目の的だぞ。だってさ、おまえらって、並んで立っているだけで、そこだけもう別世界。アイドルのテレビドラマの撮影中かと思うくらいだぞ」
「そんな大げさな……」
苦笑してしまう橘。
「大げさでもなんでもない。それに保くんのほうは、よく橘のことをポーッとハート飛ばして見てるしな。……お揃いのウサギさんつけていることも全校生徒が知ってると思う」
「そうかな?」
橘はやはりイマイチピンと来なかった。
確かに保はすごく目立つし、自分も目立つほうだとは思うけど、先輩後輩で男同士なわけだし、同じマスコットをつけているくらいで、オレたちの仲を疑うような人間がそんなにたくさんいるだろうか?
首を傾げる思いだった。
……加藤たちは気づいたわけだけど、こいつらは一年のときからつるんでる親友たちだからなあ……。
黙り込んでしまった橘を、悪友たちは落ち込んでいると勘違いしたようで、力づけるように声をかけてきた。
「まあ、相手が保くんなら同性でも好きになっても不思議でないってのが、オレたちの意見だ。あの子、かわいいだけじゃなくって、性格も素直そうだし」
「そうそう」
「オレたちは応援してるからな、橘」
親友たちの言葉は、とてもうれしかった。
「ありがとう」
橘は微笑んで、彼らへ礼を言う。
「……でもさ、オレたちは理解も応援もしてるけど、橘のことを好きな女子生徒たちの中には、保くんのこと敵対視している子もいるみたいだから、気をつけてあげろよ」
不意に加藤が気になることを口にした。
ともだちにシェアしよう!