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第25話 目立つ二人のリスク

「やっぱり図星か。あのな、橘、おまえのその嫌味なほど端整なポーカーフェイスも、オレたちには通用しないんだからな」  内川がそう言い、和田が言葉を引き継ぐ。 「だいたいスポーツバッグに保くんとお揃いのウサギさんなんかつけてさー。女子じゃねーんだし、もうアヤシイ匂いがプンプンってやつだよ」  そんなことまで指摘されて、さすがの橘もぽかんとなってしまう。 「あんな小さなマスコットに、よく気付いたな、おまえら」  半ばあきれた気分で言うと、  三人の悪友たちはやれやれと顔を見合わせた。 「橘って、自分がモテるっていう自覚はあるくせに、どれだけ目立ってるかはイマイチ自覚ないんだよなー」 「いやいや。橘はまだマシだよ。問題なのは保くんのほう。あの子、あんなに綺麗で目立つのに、まったくその自覚ないみたいだもん」 「橘、はっきり言って、おまえと保くん、めーっちゃ目立ってるぞ」  三人に次から次へと言われても、どうもピンと来ない。 「でも、オレと保は、学校では部活くらいでしか一緒にいないし、それも学年が違うから、それほど目立つわけ――」 「あまーい!」  橘の言葉は途中で遮られてしまった。 「おまえら二人、今、全女子生徒の注目の的だぞ。だってさ、おまえらって、並んで立っているだけで、そこだけもう別世界。アイドルのテレビドラマの撮影中かと思うくらいだぞ」 「そんな大げさな……」  苦笑してしまう橘。 「大げさでもなんでもない。それに保くんのほうは、よく橘のことをポーッとハート飛ばして見てるしな。……お揃いのウサギさんつけていることも全校生徒が知ってると思う」 「そうかな?」  橘はやはりイマイチピンと来なかった。  確かに保はすごく目立つし、自分も目立つほうだとは思うけど、先輩後輩で男同士なわけだし、同じマスコットをつけているくらいで、オレたちの仲を疑うような人間がそんなにたくさんいるだろうか?  首を傾げる思いだった。  ……加藤たちは気づいたわけだけど、こいつらは一年のときからつるんでる親友たちだからなあ……。  黙り込んでしまった橘を、悪友たちは落ち込んでいると勘違いしたようで、力づけるように声をかけてきた。 「まあ、相手が保くんなら同性でも好きになっても不思議でないってのが、オレたちの意見だ。あの子、かわいいだけじゃなくって、性格も素直そうだし」 「そうそう」 「オレたちは応援してるからな、橘」  親友たちの言葉は、とてもうれしかった。 「ありがとう」  橘は微笑んで、彼らへ礼を言う。 「……でもさ、オレたちは理解も応援もしてるけど、橘のことを好きな女子生徒たちの中には、保くんのこと敵対視している子もいるみたいだから、気をつけてあげろよ」  不意に加藤が気になることを口にした。

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