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第30話 お風呂上り

「えっ……?」  保がこころなしか頬を染めて、橘を見る。 「あっ、いや。まだ入りたくなければ、あとでいいし。な、なんかdvdでも観ようか?」  あー、オレ、なに言ってるんだろ……。  慌てる気持ちと高鳴る鼓動を橘が持て余していると、 「……汗、かいちゃったんで、お風呂、先入らせてもらってもいいですか?」  保がそう言った。 「え? あ、うん。勿論」 「えーと……、もうどこにも行かないから、パジャマに着替えちゃってもいいですよね?」 「うん。そう、だな」  保のパジャマ姿……、なんか想像するだけでクラクラするような……。  保をバスルームへ案内して、シャワーの使い方などを説明し、新品のバスタオルを渡すと、橘は部屋へ戻った。  しばらくすると、シャワーの音がかすかに聞こえてきた。  橘は落ちつかない気持ちをなんとかなだめようと、深呼吸をしたりしてみたが、気持ちは昂ぶるばかりだった。  これじゃまるで童貞の中坊みたいじゃないかよ……。  ツラツラと考え、速くなるばかりの心拍と戦っているうちに、保が風呂から上がって部屋へ戻ってきた。  風呂上りの保は罪作りというしかないくらい、エロかった。  濡れた髪も、色白の肌を桜色に染めているさまも、白い無地のパジャマさえ、彼の天使っぽさを助長するアイテムにしか見えなくて……。 「お風呂、ありがとうございました」  保がペコンとかわいく頭を下げる。 「あ、ああ、うん。オレ、続いて入っちゃうわ。……喉乾いてるなら冷蔵庫にミネラルウオーターがあるから」  これは風呂で処理しとかなきゃ、確実に抑えが利かなくなる……。  そう思った橘は、逃げるようにバスルームへと行った。

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