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第31話 濃密な夜の始まり

 橘はシャワーを浴び、暴走しそうな欲望を処理して、風呂から出た。  ……これで、なんとか保へ襲いかからずには済むはず……、多分。  部屋の前で一度深呼吸をすると、ドアを開けた。 「あ、おかえりなさい。先輩」  ベッドにもたれかかって、小説を読んでいた保が、はにかんだような微笑みで迎えてくれて……。  その瞬間、もう我慢ができなくなった。  橘は保の細い腕を引き寄せ、自分の胸の中へ抱き込み、少し乱暴に唇を重ねた。 「んっ……、せんぱ……」  保は一瞬、体を強張らせたが、すぐに力を抜いて、両腕を橘の背中へと回してきた。  薄っすらと開かれている彼の唇のあいだへ舌を差し入れると、保はおずおずと舌を絡めてきた。  深く淫らなキスに溺れながら、橘は保をベッドへ押し倒した。  長い口づけを終え、ゆっくりと顔を離すと、名残りを惜しむかのように煌めく糸が二人の唇を繋いでいた。  受け止めきれなかった唾液が保の唇の端から滴るさまが、たまらなく色っぽい。 「保……」  口づけに上気した頬も潤んだ瞳も、橘の雄をダイレクトに刺激して……。  このまま行くと、狂暴なまでの欲望を抑えきれそうになかった。  でも……。  激しい情欲の赴くまま保を抱きたい気持ちと、そんなことをすれば彼をひどく傷つけてしまいそうな不安が、橘の中でせめぎ合う。  と、保が口を開いた。 「橘先輩……、僕、そんな軟弱じゃありません……」 「保……」 「いいです。先輩になら、なにされたって、僕……」  その瞬間、橘の理性の糸はぶち切れた。  再び口づけを交わしながら、橘は保のパジャマのボタンを外していく。  唇を耳元から首筋、鎖骨へと這わせながら、パジャマの前を全開にしてしまう。  ゆっくりと唇を胸元へと彷徨わせて、淡い色をした小さな乳首へ吸い付いた。 「……あっ……」  途端に保の体がピクンと跳ね上がった。  艶めかしい姿態に、橘は夢中になる。  

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