35 / 55
第35話 行為のあとの甘い時間
橘と保はしばらく一つに繋がったまま、お互いの激しい鼓動を感じ合っていた。
速く駆ける心臓、荒い息遣い、おびただしい汗……。
達したあとの心地よい余韻を二人は共有していた。
やがて少しずつ息が整い、駆け足をしていた心臓も平常へと戻る。
快感の名残りの時間をフワフワとたゆたっていた橘と保は、現実の時間の流れへ戻ってきた。
「……保、大丈夫か?」
汗で額にはりついている髪を、やさしくはらってあげながら、橘は聞いた。
保にとっては、なにもかもが初めての行為だというのに、途中からは完全に理性はどこかへ飛んで行ってしまい、彼との愛の行為に溺れてしまった。
保も快感を覚えてくれたみたいだが、やはり無理をさせてしまったのではないだろうかと、今更ながら橘は心配になった。
保は大きな瞳を微笑ませて、
「平気、です……」
そう答えてくれた。
二人とも声が掠れていて、行為の激しさを物語っていた。
「ね、橘先輩……」
保が少し甘えるみたいに名前を呼んでくるのが、かわいい。
「なに?」
「……僕、すごく幸せです……」
はにかんだように言う。
「保……」
橘は彼の唇へやさしいキスをすると、
「それはオレのセリフ」
華奢な体を自分の腕の中へ抱き込んだ。
ともだちにシェアしよう!