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第35話 行為のあとの甘い時間

 橘と保はしばらく一つに繋がったまま、お互いの激しい鼓動を感じ合っていた。  速く駆ける心臓、荒い息遣い、おびただしい汗……。  達したあとの心地よい余韻を二人は共有していた。  やがて少しずつ息が整い、駆け足をしていた心臓も平常へと戻る。  快感の名残りの時間をフワフワとたゆたっていた橘と保は、現実の時間の流れへ戻ってきた。 「……保、大丈夫か?」  汗で額にはりついている髪を、やさしくはらってあげながら、橘は聞いた。  保にとっては、なにもかもが初めての行為だというのに、途中からは完全に理性はどこかへ飛んで行ってしまい、彼との愛の行為に溺れてしまった。  保も快感を覚えてくれたみたいだが、やはり無理をさせてしまったのではないだろうかと、今更ながら橘は心配になった。  保は大きな瞳を微笑ませて、 「平気、です……」  そう答えてくれた。  二人とも声が掠れていて、行為の激しさを物語っていた。 「ね、橘先輩……」  保が少し甘えるみたいに名前を呼んでくるのが、かわいい。 「なに?」 「……僕、すごく幸せです……」  はにかんだように言う。 「保……」  橘は彼の唇へやさしいキスをすると、 「それはオレのセリフ」  華奢な体を自分の腕の中へ抱き込んだ。

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