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第37話 夢のお姫様抱っこ

「おはようございます……、先輩」  保はなんだかとても気恥ずかしくて、同時にとても幸せで……。  橘がそっと手を伸ばし、保の髪を優しく撫でてくれながら、心配そうに聞いてきた。 「体……、大丈夫か?」  彼のやさしさに保の胸が甘く疼く。 「大丈夫です」  保が微笑んで答えたとき――、  ――クウゥ……。  ほとんど同時に二人のおなかが鳴った。  保と橘はお互い顔を見合わせ、赤面する。 「……そういえば、昨日、晩ごはん食べなかったんだっけ」  橘が照れくさそうに髪をかき上げて、苦笑した。  そして彼は上半身を起こすと、大きく伸びをした。  こうして明るい日の光の中で見る橘の体は、程よく筋肉がつき、本当に綺麗で、保は見惚れてしまった。 「ご飯の前にシャワー、浴びようか、保」 「えっ……?」 「一緒に浴びよ?」 「い、一緒にですか?」 「うん、嫌?」  冷たい美貌と裏腹に、かわいく首を傾げる橘。 「……嫌じゃないですけど……」  恥ずかしいです、とまでは言わせてもらえず、保はいきなりシーツごと橘に抱き上げられた。  それはいわゆるお姫様抱っこというやつで……。 「せ、先輩っ、僕、ちゃんと歩けますからっ……、あの、お、降ろしてください……!」 「だってオレ、保のことこうして抱き上げて、一緒にシャワー浴びに行くの、ずーっと夢見てたんだよ?」 「う……」  愛しい人の端整な顔に、至近距離で囁かれると、もう拒絶なんかできない。 「……でも、先輩、僕は女の子じゃないです」  せめてもの反発に保がそう呟くと、橘は意味深な微笑みを浮かべ、 「保が男だってことは、オレが一番よく知ってるよ」  そんな言葉を口にして、保の下半身へ視線を寄越した。 「……っ……! 先輩って、本当はすごくエッチなんですねっ……」 「今頃分かったの? 保」  橘はそう言うと、保の頬へチュッとキスをくれた。

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