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第46話 二学期の始まり
二学期の始業式。
体育館で校長先生の退屈な話を聞きながら、橘はあくびを噛み殺した。
特に寝不足というわけではないのだが、体はやはりお疲れ気味だ。
昨日のラブホでは何回イッたか分からないくらい、したからなー。
ふと脳裏に、保の淫らに乱れる姿態が浮かんで、つい体が反応してしまいそうになった。
慌てて、それを抑えると、頭の中で勝手に再生されてしまうエロい場面を懸命に停止させた。
さっき教室から体育館へ向かうとき、チラッとだけだが、保の姿を見かけた。
彼は橘よりも濃い疲労の色を、その綺麗な顔に滲ませていた。
――ラブホテルでは時間を延長して睦み合い、入ったのは昼過ぎだったのに、出てきたときは、もう夕暮れ時だった。
そのあとファミレスで食事して、ふらふら状態の保を家まで送り届け、橘は帰路に着いたのだ。
疲れてて当然だよな……。
少々ばつが悪い気持ちで、保の青白い顔色を思い出す。
まあ、今日は部活もミーティングだけだし、終わったらさっさと家へ送ってやらなきゃな。
しかし、保は疲れの色を顔に浮かべていたものの、友達と楽しそうに笑っていたし、光り輝くようなオーラも健在で、とても幸せそうに見えた。
そのことに橘は安堵とともに、自分もまた幸せな気持ちになった。
校長先生の長い話を聞き終え、体育館から教室に戻るとき、橘は悪友の三人……加藤、内川、和田……に、頭を力任せに殴られた。
「……いってーな、なんだよっ……?」
「橘、夏休みに保くんと、ヤッたな!」
悪友たちは一応声をひそめて、そう言った。
ドキッとなりながらも、橘はポーカーフェイスを決め込んだ。
「なんのことだよ?」
「オレたちには、その顔は通じないって言っただろ。さっき、保くん見かけたけど、なんかアヤシイ色気がプラスされてたぞ。あれは、初エッチを経験したからとしか思えない」
「…………」
こいつら、本当にそういうことには鋭いな……。
心の中で愚痴りながらも、橘は貝のごとく口を閉ざし、さっさと教室へ向かって歩き出した。
後ろから悪友たちの声が追いかけてきたけれども、知らん顔をしたまま歩いていった。
そんなふうにまた、新学期が平和に始まった……と、思っていたのだが――。
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