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第47話 不穏な女子生徒

 その日、いつもよりも帰りのショートホームルームが長引き、保は陸上部の部室へと急いでいた。  すると、不意に後ろから声をかけられた。 「ちょっと」  保が振り返ると、三人の女子生徒が立っていた。二年生のようだ。  三人のうち、二人までは知らない先輩女子だったが、一人の先輩女子のことは、保も知っていた。  学校でも一・二を争う美少女として有名だからだ。  保のクラスにも彼女に憧れている男子生徒がたくさんいるが、勿論、保は興味などない。だから名前すら知らなかった。 「……はい。あの、なにか?」  少し臆するような声音になったのは、目の前の先輩女子たちが、あからさまな敵意を保へ向けていたからだ。  美少女は、保の持っているスポーツバッグのほうを不愉快そうに一瞥してから、 「話があるの。ちょっと一緒に来て」  有無を言わせぬとがった声で、言葉を吐き捨てた。  三人の先輩女子が、保を連れてきたのは、北校舎の裏庭だった。  日が差さず、ジメッとしているため、いつもひと気がない。  保は校舎の壁に追い込まれ、三人の女子に囲まれてしまった。 「話って、なんでしょうか? ……あの、僕、急いでるんですけど」 「うるさいわねっ!」  一人の先輩女子が金切り声をあげたので、保の耳がキーンと鳴った。  真ん中に立つ美少女が静かな、でも明らかに怒りを含んだ声で保に言い放つ。 「あなた、男のくせに橘くんに近づいてなんなの? 気持ち悪い」  その言葉を受けて、保はああ……と納得した。  この美少女の先輩は、橘先輩のことが好きなんだ……。だから僕に、こんなに敵意を向けてくるんだ、と。 「お揃いのマスコットなんかつけて、本当に気持ち悪いし、目障りなのよ。……陸上部をやめて、これ以上、橘くんへ近づかないで!」  命令口調で言われて、保はムッとした。

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