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第50話 胸騒ぎの正体
橘は不安な気持ちで、グランドから一年の教室があるほうを見ていた。
遅いな……、保。
なかなか部活動へ出てこない恋人を心配していた。
帰りのホームルームが長引いたり、教師に呼び止められたりして、遅くなったことはあったが、こんなに遅くなること今までにはなかった。
なんだかすごく嫌な胸騒ぎがしていた。
「よう、橘、どうした? ぼんやりして」
気が付くと、バスケットボール部の友人が来ていた。
「ああ、ちょっとな。ごめん、今日は試合の助っ人には行けないわ」
保のことが気になってそれどころじゃない。
「いや。そうじゃなくって。なあ、おまえのお気に入りの後輩、浜下だっけ? 部活に来てるか?」
橘は友人の口調に気になるものを感じた。
「まだ来てなくって、心配してるんだ。おまえ、なんか知ってる?」
「……チラッと見かけただけなんだけど、さっき平岡たちが浜下を連れて、北校舎の裏のほうへ行ってさ。ほら平岡は橘のことが好きだから、あの子のこと、敵対視してるって噂だろ? なんとなく気になって……」
友人が最後まで話し終える前に、橘は走り出していた。
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