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第51話 正義の王子様の登場
「大きな声出されるとやっかいだから、口を塞ぎなさいよ」
美少女に言われるままに、口を塞ごうとしてくる分厚い手に、保は思いきり噛みついてやった。
「いでーっ!」
悲鳴とともに一人の男の手が緩んだ瞬間、保はめちゃくちゃに暴れて抵抗した。
けれど、多勢に無勢だ。すぐにまた押さえつけられ、今度はシャツを引き裂かれた。
もう保にはどうしようもなく、男たちを睨みつけるしかできない。
――そのとき。
「保っ!!」
橘の声が聞こえたかと思うと、ふっと体が軽くなった。
……橘先輩……、来てくれた?
見れば、橘が三人の男を相手に戦っていた……というより、橘が一方的に男たちをやっつけていた。
体格は三人の男のほうが大きいが、橘はさすがに陸上部のエースだった。
瞬発力と、しなやかな体のバネを使った無駄のない動きで、あっという間に三人の男たちをのしてしまった。
「保っ! 大丈夫か!?」
橘が保の傍へやって来て、体を抱き起こしてくれる。
保は今になって体がガタガタと震えてきた。
彼が心配そうに聞いてくる。
「怪我はないか? なにもされなかったか?」
「へい、き。服、破かれただけ……」
そう答えると、保は橘の腕の中に抱き込まれた。
彼は、しばし保を強く抱擁すると、にわかに立ち上がった。
そして、唖然としている美少女たちのほうへと歩いていく。
その顔は、保が今まで見たことがないくらい怖くて、鋭い怒りを浮かべていた。
顔が端整な分、怒ると迫力があるのだ。
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