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俺に夢中になってくれませんか。

わかっているのかいないのか、ただ単に甘えたい気分なだけなのか、俺に向かって両手を広げる。 広げた腕に収まるとそのまま腕が首に巻き付き、ふわりと体臭と酒の匂いが鼻を擽る。 「好きです」 耳元で囁くように言うと遥さんの身体がびくりと揺れた。 続けて俺の首筋に擦りつけられるように頭が小さく頷く。 「…うん」 好きだと返してくれない照れた唇に軽いキスを落とすと、トロンとした目に水の膜が浮かんだ。 まだ数えるほどしかキスをしたことがないが、たぶん遥さんはキスが好きだ。 さっきよりも深く長く唇を合わせていると遥さんが俺の胸を軽く押した。 「酒臭いから」 「あ、ごめんなさい」 「違う、お前は……臭くない」 「じゃあ舌入れてもいいですか?」 「……聞くなって」 目元をうっすらと赤く染めた遥さんを抱き寄せ唇をまた合わせた。 顎を下に引いて下唇を開かせてからそっと舌を割り込ませる。 「ん……」 舌を絡めると遥さんの鼻から甘えた声が漏れる。 強く抱き締め髪を撫でながらもっと、と舌を絡め吸うと、首に回されていた遥さんの手が俺に習うように俺の襟足を撫でる。 舌で上顎のぼこぼこをなぞるように横に滑らせ擦ると高い声が細く漏れた。 「お前のキス、好き…」 「キスだけ?」 「………違う、けど」 また照れて俯いてしまわないうちに慌てて顔を傾け近づくと、さらに慌てた手が俺の胸を押した。 「まだするの?」 「嫌ですか?」 「嫌、じゃないけど、えっと、」 もじ、と摺り合わされた膝を見逃さなかった。 「勃っちゃいました?」 「…………っ、違っ」 顔をそむけたことで赤くなった耳が丸見えで、照れた顔を隠しても意味がないことをわかってない。 抱きたい。 抱きしめたりキスをしたり、そういう触れ合いができるようになったことが嬉しい。 でも本音はもっともっと深く触れ合いたい。 恐らく誰も触れたことのない場所をじっくりと眺め、舐め、本人すら知らない快感を存分に与えたい。 ゲイじゃないこの人が俺の告白を受け入れてくれたのは何故か。 嫌われてはいない、それはわかる。 後輩としてかわいがってくれていることは分かりきっていたのに、それを邪な気持ちでいいように受け取ったのは俺だ。 人当たりはいいのに、実は人見知りで、 初見が終わると微かに長い息を吐く癖を知っている。 友達だとか仲間だとかそこまで入ると、とことん優しく面倒見が良い。 先々に回り相手に気を遣わさないように動いてくれる。 見ていれば見ていくほどに、知れば知るほどに強く惹かれていった。 毎朝の出勤時間を密かに真由ちゃんと競っているとこ。 誠一さんに頭を撫でられるのが好きなとこ。 響子さんに弄られるのも嫌いではないこと。 泰生さんの腹を叩くのが好きなこと。 俺の顔を見上げるのが好きなこと。 仕事の時はクールな印象のこの人がたまに見せる幼い笑顔にいつも胸が踊らされる。 きっと慣れることなんてこの先もないだろう。

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