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俺のだって言っていいですか。
悲鳴の元は真由ちゃんだった。
両手を胸の前で組み震えている。
おまけにうっすら涙まで浮かべている。
異様な真由ちゃんの様子にみんなが固まっていた。
「ま、真由ちゃん」
「大丈夫…?」
近くにいた響子さんと泰生さんの声かけにも声を上げない真由ちゃんに話すべきではなかったと遥さんが顔を手で覆った時。
「…………いい」
低い声が真由ちゃんから漏れた。
「いい!凄くいい!お似合い!!ね、ちょっとそこに2人並んで立って下さい!」
あっという間に俺と遥さんは横並びに並ばされる。
「はい、そのまま向き合って!」
言われるまま向き合う。
一瞬絡んだ視線は遥さんが俺の喉元を見た事で反らされた。
「………………いい」
また低い声が漏れる。
「真由ちゃんて腐女子だったのね」
「腐女子?あぁ、男同士が好きなやつ?」
響子さんと泰生さんが飽きたようにそれぞれの席に付きパソコンに向かった。
「腐女子じゃないけど、お似合いよ」
「まぁイケメン同士だと抵抗ないもんだなぁ」
「…………いい」
驚くほど好意的に受け入れられ呆然とする俺の頬をピタピタと軽く叩いて遥さんが笑った。
「これで簡単に俺のこと捨てられなくなったな。ざまーみろ」
舌をちょっと出して遥さんが言った。
抱きしめたい衝動を握りこぶしをさらに握り込み耐える。
「侑司くん、何かあったら遥くんより先に私が出るから覚悟決めて大事にしなさい」
「響子さんより先に誠一さんが出るだろ」
「いいえ!私が一番に出ます!」
この会社の皆から大事にされている遥さん。
俺の好きな人は皆も好きなのだ。
それが嬉しくてたまらない。
「絶対大事にします!」
胸を張って宣言した俺の後ろ頭がまた叩かれる。
「まず俺に言えよ、そういうことは」
うっすらと赤くなっている耳を手で隠しながら遥さんが小さい声で言った。
この会社にいる時は隠さなくていい。
俺らのことを遥さんが言ってくれたことがとてつもなく嬉しかった。
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