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俺を独占してくれませんか。
ある日いつものように初見のお客さんの登録をしていた。
俺の前の席に新規のお客さん。俺の隣には侑司。
芦川さん22歳彼氏と同棲中は細々とした質問の間中侑司の顔をチラチラ見ている。
最初は俺と2人で最低条件などを聞いていて、
その時は彼氏と同棲中でぇ、ラブラブでぇ、なんて関係ないことを聞いてもいないのにベラベラと喋っていたのに、
侑司が席に着いたとたん、目が狩猟者のように輝きその中にはハートが飛んでいるように見えた。
やたら身体をくねくねもじもじし始め、上目遣いで侑司をチラチラ見ている。
その熱視線に侑司も気付いているのは確かだが、しっかりと対お客様仕様になっている。
「あのぅ、瀧田さんは、あ、水元さんもだけどぉ、2人とも彼女いるんですかぁ?」
俺はついでかい。
別にいいけどさ。
「いますよ」
ニコニコと営業スマイルを貼り付けた顔で侑司が答える。
「えー残念。あたし立候補しようと思ったのにぃ」
おいおい芦川さん22歳彼氏と同棲中、あんた彼氏とラブラブなんだろうが。
「どんな人なんですかぁ?」
「そうですね、美人で可愛くて綺麗で照れ屋なんだけど甘えんぼで、でもとてもかっこ良くて尊敬できる人です」
テーブルに着いていた肘がかくんと落ちた。
今言ったのはもしかして俺のことか?
耳が急に熱くなった気がした。
「写メないんですかぁ?見たーい」
「照れ屋なんで撮らせてくれないんですよ」
ぐっと喉が鳴った。
確かに何度か写メは断った覚えはある。
「一緒に写メとか撮りたいですよねぇ、彼女冷たぁーい。あたしならバンバン一緒に撮りますよぉ?」
へぇ、こうやってアピールってするもんなんだな。
変なとこに関心していると芦川さん22歳彼氏と同棲中が自分の携帯を取り出し侑司をこれでもかと上目遣いで見つめた。
「バイト先の事で相談とか、してもいいですか?連絡先交換してもらえません?」
全くさり気なくないが、脇を締め胸の強調も忘れていない。
すげー、俺こんなあからさまなアピールされたことないわ。
ますます関心してしまい、完全に傍観者になった俺の革靴を侑司の革靴が突いた。
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