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俺を独占してくれませんか。

「はぁーーーーーーーーーっ……」 「久々しつこかったな」 ぐったりした様子の侑司の髪をわさわさと撫でて苦笑いした。 眉間に皺を寄せたまま腰に手を当てネクタイを少し緩める。 その仕草が気怠く嫌味な程色っぽく、さり気なく視線をそらした。 「もうさ、君達本当に指輪したら?」 コーヒーを入れた泰生さんが席に戻るついでに声をかけてくる。 「目の前でパートナーを口説かれてるのを見るのなんて嫌でしょーよ」 ずずっとコーヒーを啜った後で泰生さんは俺と侑司を順に見て言った。 「まぁ、確かにいい気はしないんですけど、この人は俺のなんだって優越感もあります。あなたがどれほど望んでも手に入らないですよって教えてあげたくなる」 侑司がそう言うと真由ちゃんが切なそうなため息を吐いた。 「はぁーーー、いい……」 「堂々と何言ってんだよ」 侑司の頭を軽く叩くと叩いた後ろ頭を掻きながら侑司が眉を寄せた。 「じゃあ遥さんは優越感とか独占欲とかないんですか?ちょびっとも?」 「……別に、ない」 あるよ。 あるけど、それを素直に認めてしまうには場所が悪い。 えぇ?と肩を落とした侑司の尻を叩いて仕事に戻る。 出掛けていた響子さんが戻った所で終業時間になり、それぞれが帰り支度を済ませ挨拶をして帰っていく。 「遥さん、今日俺ん家来ません?飯一緒に食いましょう」 誠一さんに挨拶をして2人で会社を出る。 近所のスーパーで買い物して帰りましょうと何気ない話しをしながら駅に向かう。 「あ、瀧田さーん」 聞き覚えのある声に2人で振り向くと帰ったはずの芦川さん22歳彼氏と同棲中が駅中のATMから出てくるところだった。 「偶然ですね!ご飯行きません?」 絶対に偶然ではない。 早速侑司の腕に自分の腕を絡めて上目遣いで迫っている。 「すみません、彼女と約束してるんです」 「えぇー?彼女とはいつでも会えるでしょー?今日くらいあたしの相手してくださいよぉ」 「いつでも会えても彼女が一番です。他の人は目に入らないので」 「えぇー」 拗ねて唇を尖らせた芦川さん22歳彼氏と同棲中がふと侑司の頭に手を伸ばした。 「ゴミがついてますよぉ、取ってあげますからちょっと屈んでください」 身体が動いていた。 二人の間に割り込むようにして絡んだ腕を外れさす。 「えっ、何なに?びっくりしたぁ」 「侑司」 「は、はい」 「言うぞ、ごめん」 一応断ってから芦川さん22歳彼氏と同棲中に向き直る。 「芦川さん、すみません。こいつは俺のなんで気軽に触ったりちょっかい出さないでください」 「えっ、俺のって、えっ?」 「失礼します。侑司、行くぞ」 会釈をしてから侑司の腕を掴んで足早にその場を離れた。 目的の駅に着くと今度は侑司が俺の腕を掴んで足早に歩き出す。 寄ると言っていたスーパーも通りすぎて一目散に部屋に向かっている。 「おい、スーパー寄るんじゃないのか?」 答えもせずに降りてくるエレベーターも待たずに俺の腕を掴んだまま階段を駆け上がり、せっかちに鍵を開け部屋に飛び込むようにして入る。 鞄を放り投げるようにして置くと侑司は俺を玄関で抱き締めた。 「ちょ、と、何、何だよ」 「気付いてないんですか」 侑司の息が荒い。 心臓の早い鼓動が伝わってくる。 「あんなに独占欲出されて平然となんてしてられない」 さらに強く抱き締められ息が止まる。 「バカ、苦しいっ」 苦し紛れに背中を叩くと拘束していた腕の力が少し緩んだ。 これ幸いと息を吐いた俺の顎を侑司の手が持ち上げる。 あ、と思った時にはもう唇が重ねられていた。 いつになく早急に舌が滑り込まされ驚いて目を見開くと刹那げに眉を寄せた侑司の顔がぼんやりと見えた。 求めてくる舌に望まれるまま舌を絡める。 濡れた音と口の中の快感に堪らず侑司の腰当たりを掴む。 酸欠になり欠けた頃漸く長いちゅーが終わった。 名残惜しそうな侑司の舌が俺の濡れた唇をそっと舐めた。 その舌が可愛くてちゅと吸ってやると、終わったと思ったちゅーがまた再開された。 腰を強く引き寄せられ、首の後ろに手が回され、深く熱くちゅーが続く。 流れこんでくる唾液を嚥下し、口内を愛撫する侑司の舌に夢中になった。 唇が離れ肩で息をするほど乱れた呼吸の中どちらからともなく抱きしめ合う。 「遥さん、答えくれませんか」 大きな手が慈しむように髪を撫でる。 「俺を、好きでしょう?」 肩口に顔を埋めたまま小さく頷く。 「まだ口には出せない?」 トーンの落ちた声でそう聞かれておずおずと顔を上げる。 さっきまで重ね合った唇がいつもより少し赤い。 侑司の望む言葉はわかる、嫌っていうほど。 答えてやりたい。 嬉しそうに笑う顔が見たい。 でも、今はそれよりも……… 「も一回、ちゅー……」 侑司の首を引き寄せ、薄く開いた唇を自分から重ねにいった。 すぐに熱い舌が入り込んでくるのに笑って、でも同じように俺も夢中になった。 終わったら言うから。 もう少しこのままちゅーをくれ。

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