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俺は嫉妬深いですか。
駅から沢山の人達が流れ出ていく。
この光景を上から見てみたい。
たまに思う。
どんな風に見えるんだろう、一箇所から溢れるように散り散りに歩いて行く人達は。
駅から会社まではおよそ5分ほど。
会社が入ったビルの1階にはコンビニがあり、遥さんは毎朝コーヒーを買ってからエレベーターに乗り込む。
コンビニを覗くとやっぱり。
レジでコーヒーのカップを持ったまま、レジの女の子と楽しそうに喋っている。
後ろに並んでいる人がいないか、時折振り返りながら話す遥さんに思わず頬が緩む。
恐らくあのレジの女の子は遥さんに気がある。
たまに俺も買い物に行くが、接客業の性なのか、営業用スマイルかそうでないかはなんとなくわかる。
俺に対しては完全に営業用スマイルだったあの子が、今は頬を染め心からの笑顔で遥さんと話している。
こんなことで嫉妬してたらキリがない。
そうは思うが、モテるくせに自覚のない遥さんには本当にモヤモヤしてしまう。
モテるのはお前だ、とこないだも言われた。
確かに名刺をもらったり、連絡先を教えられたり、誘われることはある。
が、俺に対してのそういうお誘いは大抵本気ではない。
上手くいけばラッキーだけど、ダメでもいいや、くらいのもの。
遥さんへのお誘いは違う。
どれも簡単には諦められない本気のお誘いな事が多いのだ。
それをあの人はまるでわかっていない。
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