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俺を変態にする気ですか。

その日、昼までで終わる予定だった面接が長引き、遅めの昼食を買いに下のコンビニに遥さんと二人で来ていた。 粗方売れてしまっていて、目ぼしい物がない。 カップラーメンでも買うか、それとも他に行くか。 遥さんに声をかけようと屈んだ身体を起こすと、遥さんがゆで卵を両手に持ち真剣な顔で二つを見比べている。 「あの……何してるか聞いてもいいですか?」 「どっちが美味そう?」 遥さんに聞かれて違いがあるのか?と改めて見てみても、どちらも普通のゆで卵で、どちらも白い。 「聞かれてる答えが見つかりません」 「んーーー、お前の目節穴だな」 「そんな訳ないでしょ!遥さんに惚れたこの目ですよ!節穴な訳ないです!」 「バカッ、声がでかいっ!」 手が塞がっている遥さんに頭突きをくらった。 頭突きをくらったおかげではないが、思い出した。 遥さんは卵が大好きだった。 卵料理が特に大好物なのだ。 弁当類が極端になかったせいか、今日はゆで卵に意識がいったらしい。 「遥さん、他行きません?」 「んーーー………」 ダメだ。 カップラーメン選んでこよう。 定番のカップ麺を二つにお茶のペットボトル二本をカゴに入れ、おにぎり売り場に戻っても遥さんはまだゆで卵と見つめ合っている。 なんかここまで吟味して選ばれてるのを見てたらちょっとどころかだいぶやきもきしている自分がいた。 おかしな事を口に出してしまいそうになった時、声がかかった。 「水元さん?今日遅かったんですね」 「あ、お疲れ、愛ちゃん」 いつも遥さんと話すレジの女の子だ。 愛ちゃんて言うのか、初めて名前知ったな。 「またゆで卵で悩んでるんですか?」 「そう、こいつに聞いても違いがわかんねーって。愛ちゃんどっちが美味そう?」 「そうですねー、あたしならこっちかな」 愛ちゃんが遥さんの右手に触れながら小首を傾げて笑った。 「おー、やっぱり?俺もこっちだと思ってたんだ」 にこにこと笑う遥さんににこにこと微笑み返す愛ちゃん。 完敗した上に頭の上にでかいタライを落とされたような衝撃。 恋人は俺なのに、なんだろうこの敗北感。 会計を済ませてコンビニを出てエレベーターに乗り込む。 「で?」 「……はい?」 「お前はなんでそんな激しく落ち込んでんの?」 「ゆで卵の違いがわかるようになるまで放っておいてください……」 「     」 暫くの沈黙の後遥さんが噴き出した。

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