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俺と離れても平気ですか。

「俺は、違ったんですか」 侑司の問いに頷く。 賭け、だった。 好きになるのも、好きになられるのも怖かった。 そう、怖かったんだ。 また裏切られたら。 そう考えるだけで脚が竦み震えた。 冷めなかった侑司となら、変われるかもしれない。 だから自分に、侑司に賭けたんだ。 「お前さ、不安なんだろ?俺がまた女性に戻ったりしないかとか、 この先別れたりしちゃったりしたらとか、 色々考えてんじゃない?」 侑司の肩に頭を乗せて聞いてやる。 「さっきの話、引くくらい重いだろ? 嫌に、なったか?」 「遥さんを?まさか!そんなことあり得ません!」 「…そっか」 漸く息を深く吐いた。 込み上げてくる涙を堪え、侑司の背に腕を回して抱き着いた。 「狡い言い方だけど、俺の好き、ちゃんと信じて受けとめてよ…」 ヤバイ、鼻声だ。 侑司にバレる。 「…はい!」 侑司はそう言うと俺を抱き締め返し、髪を撫でた。 「遥さん、好きです…」 「ん、俺一途だから浮気とかいらん心配しなくていいからな」 「…はい」 耳元で遥さんと何度も名前を呼ばれる。 もう悲しくも切なくもない。 不安も心配もなくなった侑司の声がただただ愛しい思いを伝えてくる。 「あの、一つ聞いてもいいですか?」 身体を離し、ちゅーをくれるかと待つ俺に侑司が申し訳なさそうに聞く。 「何」 「里香さんとは何を話したんですか?」 「上司が首になって別れたからヨリを戻さないかって」 「ええ!?」 目ん玉をひん剥いて驚く侑司に堪らず噴き出した。 「丁重にお断りしたよ、俺には恋人がいるしな」 「諦めてくれますかね……」 さぁな、と言って我慢出来ずに侑司の口に吸い付く。 唇をぺろりと舐めてから侑司を見て笑ってみせる。 「いざとなったらダーリンが出てくれるよな?」 「もちろんです!遥さんは誰にも渡しません!」 言い切る侑司の頭を撫でてやり、抱き着いた。 俺も渡さねーよ、と耳元で囁いて。

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