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俺の思いは急ぎすぎですか。

「遥さん、まだここの角拭いてないです」 「そんな角っこ行かないしいいだろ」 「掃除は行く行かないでやるんじゃないんです」 「はいはい、やりますよぉー」 休日の昼前。 昨夜泊まった遥さんの部屋を2人で掃除している。 遥さんは大雑把だ。 大雑把なくせに、あそこ汚れてるから拭いといてだとか、風呂場の鏡磨いといてだとか、俺にはアレコレ注文をつけてくる。 「なぁ、もうアレ買おうぜ、お掃除ロボットさん」 「掃除機があるじゃないですか」 「お掃除ロボットさんてさ、俺のいない間にお掃除してくれるんだろ?風呂やキッチンもやってくれる?」 記憶まで大雑把だ。 お掃除ロボットさんが綺麗にしてくれるのは床だけですと教えるとこの世の終わりみたいにガーンという顔をして項垂れた。 ネットで買おうと企み携帯で調べていたらしく、 こんなにいいお値段なのに床だけなんて、とさらに項垂れた。 あの丸くそれほど厚みもないお掃除ロボットさんが、風呂の壁やらキッチンの油汚れまで掃除してくれると思っていたところが遥さんらしい。 「足をさぁ?こう、ゴッキーみたいにして壁登れるようにしたら今より売れるんじゃないか?無敵じゃん! 侑司、お前特許申請しろよ!一生遊んで暮らせるぞ! そして俺を愛人みたいに囲って養え!」 冗談じゃない。 あのでかさで壁を這われたらそれこそ絶叫する。 カサカサどころの騒ぎじゃない。 遥さんはまだ見ぬお掃除ロボットさんが壁を這う所を想像しているのか、リビングの白い壁を見ながら良い、とうっとり呟いた。 「あの大きさで壁を這わせるのは無理ですよ」 「ならいっその事もーっとちっちゃくしてさ、カサカサ這う」「そんなになったらまさにアレでしかないでしょ、止めてください」 さらに不気味な事を言い出した遥さんを慌てて止めた。 「お掃除ロボットさんは買いません。掃除機さんで事足ります。あまりに使われなくて拗ねて掃除機さんが壊れてしまう前に使ってあげてください」 俺の言葉を聞き、部屋の隅に置かれていた掃除機の所に行くとボディーを撫で、ちゃんと使うからな、と遥さんが言った。 ……………………………悶える。 本気だろうが、本気じゃなかろうが、鼻血が出そうなほど悶えることには変わらない。 この可愛さは何だ。 「あのさ」 掃除機さんを未だ撫でながら遥さんが声をかけてきた。 「さっきさ、愛人って言ったのは、否定しないの?」 「はい?」 「俺、愛人じゃなくて、本妻がいい」 もう掃除どころじゃない。 角という角に埃がふわふわと漂っていようが、ついさっきまでイチャイチャしてシーツを替えたばかりとか、そんなことはどうでもいい。 遥さんを抱き上げるとカーテンの開いた明るい寝室に連れ込んだ。 明るいのはやだ!と暴れる遥さんを組み敷きあちこちに吸い付いて俺しか知らない甘い声を思う存分堪能した。 喘ぎ疲れた遥さんがウトウトと眠りに落ちてしまうとそっと寝室を出て、放ったらかしになっていた掃除を一人で黙々と終わらせた。

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